「八日目」で知られる、ベルギー出身のジャコ・ヴァン・ドルマル監督による13年振りの新作であり、フランス・ドイツ・カナダ・ベルギー合作映画。脚本に6年、総制作費に50億円を投じた本作は、緻密に構築された世界観と眼を見張る映像美が印象深く、SF作品としても「バタフライ・エフェクト」「パラレルワールド」「火星旅行」といった注目要素が多い。第66回ヴェネチア国際映画祭にて技術貢献賞を受賞し、日本でも2011年4月に公開されたが、上映館が僅少だったこともあり知名度は低い。しかし「超映画批評」を始めとする映画評論ブログでの評価は軒並み高く、映像美に反しDVDでしか国内販売されない事態への不満の声も見受けられる。
時は2092年、細胞の「テロマー化」によって人類が不死の存在となった現代、ニモ・ノーバディは118歳の誕生日を迎えようとしていた。病院に忍び込んだ記者を相手に彼は自分の人生(~34歳まで)について語り出すが、その人生は幾重にも運命の糸が張り巡らされたものであった。
ニモには前世の記憶がある。そしてニモが両親の元に生まれ育った後、母の不倫が発覚し離婚する場面まで遡り、分岐する。物語はアンナ、エリース、ジーンの3人の女性を核に動いていく。
父親に着いて行く。父親はうつ病になり、ニモは介護をする傍らSF小説を書く。そして、偶然通りかかったダンスクラブでエリースに会う。しかしエリースは不良のステファノに惚れていると言う。ニモとエリースは、エリースが死んだら火星に遺灰をばら撒くという約束をし、その晩、ニモはエリースにラブレターを書く。
ニモが語った人生はここまでであり、彼はそのどれもが自分の正しい人生であると言い張る。しかし、彼は70年前、実は彼はこの世界には実在しない人間であるということを、未来のニモから教えられていた。その原因としては、以下の四つの運命が語られている。
未来のニモ曰く、上記のような世界線であるにも関わらず、ニモは存在していて、全ての人生は9歳のニモの想像の産物だと言う。そして彼は2092年2月12日の午前5時50分まで生き延びろと言った。言葉通り彼は生き延び、宇宙大収縮は突然にして起こり、時間は遡っていく…
正直何度か見ても分からないところは徹底して分からない作品なので、細かいところはご容赦ください。
ちなみに、これを書きながら同監督の「八日目」を見ていますが、これもなかなか面白いです。ダウン症患者が主人公だけど、「ミスター・ノーバディ」にも友情出演していたりして。例のツボを割るシーンもあります。
「実験でハトは、ボタンを押すとエサが出ると学習する。だがタイマーで自動的にエサを出すと自問する。『私が何をした?』と。そしてエサが出た時の行動を繰り返す。その行動によってエサが出たと信じて。これが『ハトの迷信行動』だ。」
「僕は生まれるずっと前のことを覚えてる。まだ生まれてない皆と待ってた。生まれる前の子は全部知ってる。これから何が起こるかを。順番が来ると『忘却の天使』が唇に指をあてる。上唇に跡がつく。すべてを忘れた印だ。でも僕は素通りされた。」
「ビッグバン以前の宇宙は?『以前』は存在しない。なぜなら、時間が存在しなかった。『時間』は宇宙が膨張して生じるものだ。では宇宙が膨張をやめたら?動きが逆行したら?時間はどうなる?物理学の『超ひも理論』では宇宙が9次元空間と1次元時間だという。おそらく最初はあらゆる次元が絡み合っていた。それがビッグバンによってタテ・ヨコ・高さの3次元空間と、時間を持つ1次元時間が現れた。あとの6次元は小さく閉じている。もし次元の閉じた宇宙に住んだら、どうやって分かる?錯覚と現実の違いが。我々の知る時間という次元は、一方向にのみ進む。だがもし他の次元の1つが空間ではなく時間だったら?」
「一度マッシュポテトとソースを混ぜたら分けられない。永遠に。パパのタバコから出た煙は二度と元に戻らない。時間は戻せない。だから選択に悩む。正しい選択をしないと。でも選択をしなければ、すべての可能性は残る。」
「3ヶ月と6日の旅を経て、シャトルはかに座星雲へと向かっていた。天王星と5つの衛星に沿って進む。火星のコロニーが近づく。船内ではコンピューターが人工冬眠を管理している。」
「恋に落ちるとどうなるか?何らかの刺激によって、脳の視床下部からエンドルフィンが分泌。だがなぜ特定の女と特定の男なのか?遺伝子信号と一致する無臭フェロモンが放出されるのか?あるいは肉体的な特徴か?母親と同じ目とか、幸せの記憶の甦る香りとか。恋愛は戦いの一部か?今、2つの繁殖方法が戦っている。1つは細菌やウイルスの無性生殖だ。彼らは細胞分裂と増殖でヒトよりずっと速く完成する。対するヒトは恐ろしい武器で対抗。セックスだ。男女が遺伝子を混ぜ合い、ウイルスに対する抵抗力がより高い人間を作り出す。なるべく異なる人間を。つまり我々は知らずに、2つの繁殖方法の戦争に参加を?」
「なぜアンナを失ったかって?実はその2ヶ月前、失業中のブラジル人が卵をゆでたら…ガスの熱が…室内の環境に変化を起こし、気温を少し上昇させた。それが地球の別の場所に豪雨をもたらした。そのブラジル人は働けず、家にいたから卵をゆでた。彼はジーンズ工場をクビになってた。なぜならその6ヶ月前に僕がジーンズを買う時、安い方を買ったから。中国のことわざにある。『1片の雪でも竹をしならせる』」
「なぜタバコの煙はタバコに戻らない?なぜ分子は拡散する?なぜインクの滴は不可逆だ?宇宙が消散の方向へ進んでいるからであり、それがエントロピーだ。宇宙の進化は、乱雑さを増す方向へ進んでる。エントロピーの原理は『時間の矢』と関係深い。宇宙が膨張した結果だ。だがもし重力が膨張力と拮抗したら?宇宙空間エネルギーが弱すぎたら?その時、宇宙は収縮段階に入るだろう。『宇宙大収縮』だ。時間はどうなる?逆戻りするのか?誰にも分からない。」
「君のいる時制は過去なんだ。私から見ればな。私は君だ。君より70歳年を取ってる。君の言うことは私が若い時に言ったこと。だから何の苦労もなく書き写せたよ。すべてここにある。こっちの世には君は存在していない。理由は分からん。『設計者』だけが知っている。あの少年だよ。列車を追って走った。元々両親がすれ違ったか、父親が5歳の時にソリの事故で死んだか、それとも君は大多数の人間と同じで、遺伝情報が到達しなかったか。原始時代に君の先祖の女性が死んで系譜が断ち切られたか。とにかくこっち側に、君はおらんのだ。もしアンナの計算が正しければ、君は生き延びねばならん。2092年2月12日の午前5時50分までな。」
「ではどれか1つを選べということか?私の生きたどの人生もが真実だ。どの道も正しい道だった。『人生には他のどんなことも起こり得ただろう。それらには同等の意味があったはずだ』テネシー・ウィリアムズだ。年を取れば分かる。」
「なぜ君はそこまで確信が持てる?自分が存在してると。君は存在していない。私もだ。私らは想像の産物でしかない。9歳の少年のな。9歳の子が想像の世界で生み出したんだ。究極の選択を迫られて。」
「チェスでは『ツークツワンク』という。唯一の可能な動きは…動かぬことだ。」
「見なさい。海だ。少年が世界を破壊してる。もう無用になったんだ。…以前は人生の選択ができなかった。何が起こるか分からなくて。今は分かってるからこそ、選択できずにいる。」
「今日は私の、人生で最もすばらしい日だ。…アンナ。」
『Mr. Sandman』(The Chordettes) 1954年の大ヒット曲。作詞作曲はPat Ballard。「眠りの精」って?
眠りの精よ 夢を見させて 彼を一番キュートな子にして 唇はバラの花とクローバー
教えてあげて 独りの夜は終わったと
眠りの精よ 私は寂しいの 彼氏と呼べる人もいない あなたの魔法の光線で 眠りの精よ 夢をお願い
眠りの精よ 夢を見させて 彼を一番キュートな子にして 私は気まぐれじゃないわ
教えてあげて 独りの夜は終わったと
眠りの精よ 私は寂しいの 彼氏と呼べる人もいない あなたの魔法の光線で 眠りの精よ 夢をお願い
眠りの精よ 夢を見させて 彼の瞳には魅惑の光を
道化師のような孤独な心と ピアニストのような波打つ髪も
眠りの精よ 年を取る前に この腕に抱く人を授けて あなたの魔法の光線で 眠りの精よ お願いだから
眠りの精よ 夢を見させて