グレッグ・イーガン「闇の中へ」"INTO DARKNESS"(山岸真編訳『しあわせの理由』収録, 2009-12-10, 宮本)

著者紹介 Greg Egan

1961年、オーストラリア生まれ。数学の理学士号を持つ覆面作家。量子力学とアイデンティティをアクロバティックに扱う作風は日本でも人気が高く、年間ベストSFに4度も輝いている。ちなみに、『しあわせの理由』は惜しくもベストを逃し2位になってしまったのだが、その年のベストはテッド・チャンの『あなたの人生の物語』であった。

「吸入口」説明

10年前から市街地に出現するようになった半径1kmほどの謎の空間。その内部では、基本的に向心方向と逆向きの運動をすることができない。光もそれに従っており、中心に進む人は闇の中へ進んでいく形になる。空間は定期的に位置を変え、同じ場所に存続する確率の時間変化は半減期18分の放射性核種のそれに等しい。位置を移動するときに「コア」と呼ばれる中心部以外にある全てのものを根こそぎ消滅させていくため、人間をコアまで運ぶ「ランナー」という職業が成立している。未来文明の作った人工的なワームホールが壊れたものではないかとの仮説がある。

論点1 吸入口に当たってしまった時に逃げやすいデザインを考える

家、ビル、店、道路、町をどう作るか、地下道などは有効か、例えば慶應だったらどうか、都市開発

論点2 吸入口の登場により社会はどう変わるか

法律、社会制度、保険や社会保障、病院、体育教育、宗教や思想、ネット、コピー、情報>物体

今回のポイント

イーガンは思想的な側面ばかりが取り上げられ、文学的な側面から読まれることが少ない。

そこで今回はイーガンの作品の文学性、特にメタファーに注目して話を進めたいと思う。

論点3 「闇の中へ」からメタファーを読み出す

P66 自分がなぜここにいるか → 真の理由はあまりに奇妙 → 「ワームホールは、生きることのもっとも基本的な真実を具現化している。人は未来を見ることができない。人は過去を変えられない。生きるとはすなわち、闇の中へ走っていくことである。だからわたしはここにいる。」

過去には戻れない。前は見えない。人に教わった人生の指針(地図)はある程度目安になる。家に押しつぶされて死ぬ。心に迷いを抱き光に辿り着けないと暗闇の中で消滅という宗教的世界観を、支配者の破壊により否定。

論点4 SF作品におけるメタファーの有効な利用法を考える

論点5 イーガンを文学的な観点から見る

長編では本筋から逸れた科学的設定が多すぎて、拡散した印象

短編では設定ありきの展開で、ストーリーとしては平板(カフカ的不条理に通じる?)

主人公の感情を扱う作品が多いため、一人称が多い(「道徳的ウイルス学者」「ボーダー・ガード」「オラクル」『ディアスポラ』では三人称)


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