安部公房「使者」(2009/4/16, 星)

作者紹介

安部公房(1924-1993)
東京生まれ。東京大学医学部卒。

代表作品

1951年 「壁」 芥川賞
1958年 『幽霊はここにいる』(戯曲) 岸田演劇賞
1963年 『砂の女』 読売文学賞→のちにフランスの最優秀外国文学賞
1967年 『友達』(戯曲) 谷崎潤一郎賞
1974年 『緑色のストッキング』 読売文学賞

論点

「使者」と『人間そっくり』

短篇小説「使者」の発表が1958年。約10年後の1967年に、長篇小説の『人間そっくり』が早川書房の<日本SFシリーズ>から発表される。

『人間そっくり』と「使者」の類似点

「火星ロケット成功のニュースが報じられた朝、ラジオ作家の<私>は、自ら火星人と名のる男の訪問をうけた。反重力装置を備えた特殊な物質転移機に乗って、瞬間的に地球にやってきたのだと、途方もないことをいうのである!」早川書房による宣伝文より

安部公房は「寓話」か

人間が昆虫になることは事実上ありえないが、カフカの『変身』のなかでは事実になるでしょう。『変身』を単なる寓意として読んでも真に理解したことにはならない。あの作品のなかで、カフカは事実として人間が昆虫に変身する世界を創造したわけです。その作品によってはじめて成立可能な世界の創造、それが文学の存在理由だと思う。『死に急ぐ鯨たち』(新潮文庫)より

同じ対談の中で、安部は自身の作品の登場人物やモチーフについても、「あれだって譬喩や寓意としてだけ読まれたのでは困る、あくまでも事実として受けとめてほしい」と語っている。

本物と偽物

「世界は何でできてるか考えたことある? 水夫(マドロス)さん。表面は大抵、みんなウソでできているのよ……牛肉の缶詰のレッテルだけの話じゃない、人生ってのはみんなそう! 表面はウソ、だけど中身はホント。中はホント、と思うには、表がウソだといわなきゃならない。ね、そうでしょ。魂が遠洋航海するためには、からだの方はいつも空騒ぎ! いつでも二つの追っかけっこでジャンケンで敗けた方がウソになってホントを追っかける。歴史はみんなウソ、去ってゆくものはみんなウソ、あした来る鬼だけが、ホント!」寺山修司の演劇『毛皮のマリー』より、マリーの台詞

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