1934年大阪生まれ。同志社大学文学部卒業。主な作品に「大いなる助走」、「虚人たち」、「虚航船団」、「夢の木坂分岐点」、「朝のガスパール」、「文学部唯野教授」、「ヨッパ谷への降下」、「パプリカ」、「銀齢の果て」など。担当者は去年、読書会を担当した三回のうち二回も筒井氏を召喚した。
誰もいないはずの理科実験室で怪しい気配が!実験室に侵入したために妙な薬品を嗅いだ女子中学生芳山和子は、その日以来テレポーテーションとタイムリープの能力を手に入れる。同級生深町一夫、浅倉吾朗と理科教師の福島先生と共に、自らの身に起きた不思議な出来事の謎を追う和子は、衝撃の真実を知ることになる!(とか煽ってみる。I'm an agitator.)
「信じられないわ」
「だろうね」
一夫は意外にも、あっさりとそういってのけ、軽くうなずいた。
「無理ないさ。まるでSFだものな」
以上一部抜粋。ちょっとツボ。
まず普通に感想を。
「手を洗っていらっしゃい」「まぁ、どうしたのかしら」などセリフはちょっとお嬢様みたいな感じ。最後に「いつか誰か素晴らしい人が私の前に現れる気がする」と言っていたから、シンデレラ・コンプレックスも入っている。藤本によると、「こんな奴いねぇ」とさ。
吾朗の存在が面白い。一人の常人を登場させることで「変な奴を叩く」日本人の要素がよく出ている。精神病院を探すくだりは完璧。彼のおかげで和子の「自分だけこんな能力を持っているのはいや」というセリフに真に迫るものを、「私の記憶を消さないで」というセリフに美を与える。福島先生よりよほど重要人物だと思う。
しかし、時かけを読んだ人に聞いてみると・・・
弟「吾朗?あいつ邪魔者じゃん。先生のほうが絶対重要。」
門が赤い大学(文一)に行った友達「先生はいないと進まないけど、吾朗は騒いでるだけだろ。」
門が赤い大学(理一)に行った友達「え?要らないじゃん。俺の推論だけどぜったい油の塊だぜあいつ、それに禿げてそうだし、あとさ、・・・」
といったようなことを言っていた。形なし。納得いかない。
このタームには様々な問題が付きまとう。作中にもでてくる記憶と二重存在、他にも史実変更の問題などが有名どころだろうか。特に史実変更などは、誰かに出会うことだけでも変わる可能性があるため面倒なものだ。
例:われわれがこの服装のまま中世ヨーロッパに飛ぶ。現地の少女に出会う。奇妙奇天烈な服を見たその少女が親類など周りの人にそのことを語ったところ「こいつには変な服が見えるらしい。魔女だ魔女だ!」と狩られたとさ。めでたしめでたし。
この少女が将来子供を出産したならば子供たちと子孫は少女が狩られた瞬間存在しえない者となる。これも立派な史実変更だろう。自浄作用があるなら別だが。極端な仮定だがタイムリープはパンドラボックスかもしれない。余談になるがアニメ「ルパン三世」に、タイムマシンで過去に飛んでルパン三世の先祖を殺してルパン三世を消そうとしたものがいる。
また、記憶の問題も提起したい。作中では和子が薬を嗅ぐ前と一夫が去った後にラベンダーの香りを「どこかで覚えている」と言及している。後者は微かな名残ということで良いとしよう。どうせ和子はシンデレラだ。しかし前者は疑問が残る。薬を嗅ぐ前の和子は過去に戻っていないし一夫に教わった真実をこの時点では知らないはずだ。将来のタイムリープの記憶も引き継いでいることになるが、将来いつタイムリープをするか、まで決まっている予定調和の人生を送っているとでも言うのだろうか。タイムリープの発生で予定調和になるとも思えないからもともと人生は予定調和ということか。面倒になってきた。もっとも、これは考えすぎで、演出の可能性が高い。少年誌に連載されていたことだし。
最後に、アニメ映画化されているから、相違点について語ることもできそうだ。映画指定でもう一回「時かけ」でやってみてもいいかも、と思った。