あさのあつこ「No.6」第1巻 (2008/10/16,斎藤)

作者紹介

あさのあつこ。本名、漢字表記で浅野敦子。1954年、岡山県生まれ。現在も美作市に在住。三児の母親でもある。青山学院大学文学部卒業。

1997年、『バッテリー』で第35回野間児童文芸賞、『バッテリーⅡ』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー』全6巻で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『バッテリー』に関しては、ラジオドラマ化、コミック化、映画化、ドラマ化、なんとアニメ化まで計画されていたとか(アニメ化は予算の関係で流れてしまったらしい)。

主な著書に、『テレパシー少女「蘭」事件ノート』シリーズ(コミック化、ドラマCD化、アニメは現在放送中)、『The MANZAI』シリーズ(コミック化、ドラマCD化、映画化決定)、『ガールズブルー』『ぼくたちの心霊スポット』『復讐プランナー』『ヴィヴァーチェ 紅色のエイ』シリーズ、『透明な旅路と』『ぬばたま』『弥勒の月』など、子供たちを中心とした学校ものからSF、ほかにはミステリーや時代ものまで幅広く多数。

作品紹介

既刊7巻。講談社のYA!ENTERTAINMENTから単行本が、講談社文庫から文庫が既刊4巻発売中。実は日吉の生協にも文庫が並んでいる!

9.11をテーマに、「国家は個人を守れるのか」ということを訴えるために書き始めた物語。戦争や飢餓、貧困にあえぎ衣食住に苦しむ人々に対し、富裕層、エリートと呼ばれる人たちはどのように向き合えばいいのか、自分たちはなにをするべきなのかということも、矛盾や葛藤を含め生々しく提示されていると思う。北朝鮮やイスラエル、パレスチナなどの地域を彷彿とさせる。著者曰く「生と愛と闘いの物語」だそうだ。

今月(10月10日)に最新刊(7巻)が発売されたという、チョット旬な作品である。今回の読書会では、第1巻目を課題作とした。#1の発行年月日は、2003年10月10日。

海外進出もさかんで、次第に注目度が高まっている作品である。

#1の登場人物紹介

紫苑
16歳の少年。もともとNO.6のエリートだったが、12歳のときにネズミと名乗る逃亡犯(?まだ事実は明らかにされていない)の少年を匿ったために権利を剥奪され、地位が上流階級から中の下ぐらいになってしまった。性格は、神経質で人付き合いが苦手だが、温厚な少年である。
ネズミ
本名、年齢不詳の少年。灰色の瞳と美しい歌声、美貌をもつ。わけありで逃亡中、紫苑に命を救われ、以後NO.6の隣にある西ブロックというスラム街のような場所で生きている。NO.6に憎しみを抱いている。
火藍(からん)
紫苑の母で、パン屋を経営している。息子のことをいつでも案じている。
沙布(さふ)
16歳の少女。紫苑と同じく、2歳の頃からエリートコースをまっしぐら。紫苑とは幼馴染だが、恋心を抱いている。留学することになっているのだが……。
山勢(やませ)
紫苑の同僚。20歳。事件の犠牲者になってしまう。
羅史(らし)
NO.6の治安局員。ネズミを匿ったときも尋問を担当、さらに4年後紫苑を逮捕し、矯正施設に送ろうとする。そして最新刊ではとある「役目」を負うことになる。
男&眼鏡をかけた面長の男
NO.6に住む。後に立場が明らかにされてゆく、注意人物である。なにか企んでいるらしい??

用語紹介

NO.6
環境破壊などで汚染された地球上には、もはや人類が生きられる場所が少なくなっていた。そこで、限られた場所に6つの都市を築き上げ、そのうちの1つがこの都市である。理想都市、聖都市とも呼ばれ、医療、教育などが発達している。
市庁舎
別名は、その容貌から「月の雫」。地下5階、地上10階のドーム型の建物。NO.6の中央に位置し、周りは市立病院や治安局などが並び、その周りには森林公園がある。
クロノス
NO.6内の高級住宅街。紫苑と火藍は、紫苑が12歳まではこの街で暮らしていた。
ロストタウン
紫苑が権利を剥奪されてから、一家は家を追い出され、この街に住むことになる。クロノスと比べると、快適とはいえない環境のようだ。
西ブロック
矯正施設が存在する特別警戒地域。NO.6からしてみれば、犯罪の防波堤であり、市内に犯罪を入れないための砦の役目も担っている。NO.6に隣接するスラム街のような場所でもある。NO.6に入るには、それなりの手続きが必要。環境は最悪で、そこに住まう人々は、不安定な状況下で一生懸命生き延びている。
矯正施設
刑務所のような場所。NO.6で罪を犯した者を収容、矯正するが、西ブロックの人もいる。また、都市NO.6に反対意見を言った人が多く捕らえられているということも明らかにされている。捕らえられた者はほぼ100%容疑が確定し、体内には居場所を特定できるためにVCというチップを埋められる(凶悪犯罪者を表すこともある)。

内容紹介

クロノスでエリートコースを進んでいた紫苑は、12歳の誕生日、肩に傷を負った少年ネズミを助ける。ところがネズミは逃亡中のVCだったのだ。本来ならば、不法侵入者は捕らえられるはずだが、紫苑は彼を匿い、命を救った。ネズミは救急箱と衣服を持って姿を消す。

助けた相手がVCということもあり、エリート不適合ということでいままで積み上げてきたものの一切を剥奪された紫苑は、母親の火藍とともにロストタウンに追い出される。16歳になった紫苑は、公園管理事務所で清掃用ロボットを操作する仕事に就いていた。

ところが、森林公園で老人の死体が見つかる。しかしこの老人、本当に老人ではなかったのである。と同時期に、紫苑の働く事務所でも事件が起きる。同僚の山勢が急激に衰え、死んでしまったのだ。さらに山勢の首元からハチが出てくるところまで、紫苑は全てを目撃する。

すると、紫苑は同僚の殺人犯に勝手にでっちあげられてしまい、矯正施設へと連行される羽目に。そのとき、姿を現したのはネズミだった。4年ぶりの再会だった。

ネズミとともにNO.6を脱出し、西ブロックへ。ネズミの住んでいる家(もとは図書館だったという裏設定がある)で一段落するも、ネズミは紫苑の腕に妙なシミがあることを発見。今度は紫苑の容態が急変、激しい痛みに襲われる。山勢と同様、紫苑もハチに寄生されていたのだった。

一命を取り留めた紫苑だったが、その代償に黒髪は白髪へ、さらに左足首から首にかけて、まるで体を締め上げるように紅い蛇行跡が浮き出していた。

NO.6の中で、なにか予想のつかないことが起きている。

考えを対立させつつも、紫苑は紫苑なりの、ネズミはネズミなりの方法で、西ブロックという過酷な環境下でさえも、生きて、生き延びて、闘い、聖都市NO.6へ立ち向かってゆくことを決意するのだった。

論点

1)NO.6や、都市構造、様々な制度への意見など。実際にこのような都市が将来できるか?

2)寄生バチはなにをやらかしているのか?医学的なこと、勿論アリです(なにが原因で急激に老化してしまうのか、など)。

3)少年たち、大人たち、NO.6の辿るこれから。

4)NO.6(トップクラスの高官たち)は、どんな秘密を握っていると思われるか?

5)9.11はテーマになっているか。また、なりそうか。1巻だけなので、想像しにくかったらいいです。

6)科学技術について。イスラエルで実際に使われたことがあるというものもあるそうなので、ぜひ見つけてみてください(笑)。

これら以外にも、どんどん語ってください!!

これからの展開!!(ネタばれがいやな人は飛ばしても結構です)

2巻以降、イヌカシや力河(りきが)、楊眠(ようみん)、莉莉(りり)、月薬(げつやく)、シオン(赤ちゃんです!)といった人物が登場し、盛り上がってゆく。また、6巻ではついにネズミの過去が少し明らかにされ、NO.6創設に関わった「老」(本名不明)という人物も登場し、NO.6にとって大きな存在となり得た「エリウリアス」という謎のもの(生き物なのかなんなのかは、現時点では不明である)もいきなり紹介され、謎はさらに深まるばかりである。

また、沙布が2巻で治安局に拉致されており、矯正施設でなんらかの手術を受けてしまった模様。そのため、外観に大きな変化が生じ、いままさに大変なことになっている。

沙布を拉致した現場を火藍が目撃しており、ネズミのパートナー(?)である小ネズミたちとの連絡で沙布が拉致されたことを伝えてしまい、しかも沙布の着ていたコートが西ブロックで売られており、その元手が矯正施設だったことから、紫苑は沙布を救いに行くことを決意。それぞれの目的を胸に、ネズミやイヌカシ、力河も手を組むことになる。

4巻で行われる「人狩り」と呼ばれる「清掃作業」に乗じ、なんとか矯正施設の地下潜入に成功した紫苑とネズミは、5、6巻では過酷な状況を突破してゆくこととなる。

最新刊の7巻ではついに矯正施設へと突入し、職員がうろうろする中、沙布のいる最上階へと向かう。途中、NO.6の兵士との壮絶な戦いがあり、また、想像を絶する光景を目の当たりにする。NO.6は、なにをしようとしているのか!?

講談社の特集ページがあるので、もしよろしかったら。

http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/no6/

です☆

私的想像・感想・言いたいこと(余談ですみません。興味ないというかたはすっ飛ばしてくださっても結構です)

後々「黄昏の家」というホスピスや「永遠の命」という言葉も出てくることから、老化させるハチのこととも合わせて不老不死、アンチエイジングもテーマになりそうな予感である。また、イスラエルとの関連がかなり強いと思われる。中には「紫苑」は「シオンの丘」が由来だという声も(作中では植物の紫苑が由来となっている)。植物の紫苑の花言葉、さらに学名からも、人物の紫苑を想像することができ、ネーミングに関しても奥深さを伺うことができる。

5巻ではユダヤ人虐殺、強制収容所への連行を彷彿とさせるシーンも多い。実際に行われていたという人体実験を匂わせるような描写もある。さらに、ニュルンベルグ裁判のインタビュー記事の一部が5巻に記されており、第2次世界大戦中で実際にあった事柄をモチーフとしている場面も多々見受けられる。9.11がテーマなら、突っ込まざるを得ない事柄がたくさんあるように思われる。

「あさのあつこ」というと、巷では『バッテリー』だけが異常なまでに有名になっている。その現状を打破したく、さらにいままで述べてきたように、これだけの重いテーマを掲げているからこそ、課題作にしてみた。




Topへ