テッド・チャン「あなたの人生の物語」 (2008/04/17,藤井)

1. 作者紹介

テッド・チャン(1989〜)。中国系アメリカ人で中国名は特徳蒋。1990年、短篇『バビロンの塔』でデビュー、同年のネビュラ賞短篇部門にて受賞。しばらくテクニカルライターの職に就くも1999年には課題作にてネビュラ賞及びシオドア・スタージョン記念賞を受賞。2001年の短篇『地獄とは紙の不在なり』でもヒューゴー賞などを受賞している。デビューから現在に至るまで10作程度を発表したのみの寡作家。去年は日本開催のワールドコンに出席、宝塚歌劇団のショウを観て帰った。

2. あらすじ

突如、地球外生命体によって世界各地に石英のガラスでできた映像通信装置が投棄された。各国でそれを使用した地球外生命体との通信が試みられ、合衆国でも通信と研究が始まった。女性言語学者のバンクスは物理学者のゲーリーと共に彼らの成体や言語の解明と交流を試みることになる。生命体の携帯は樽状の動態に7本の脚が付き、胴体の頂部に7個の眼があるという前後の向きのない構造のものであった。生命体はヘプタポッドという名がついた。そしてその言語は表記言語と発話言語の2通りがあることも判明する。そして研究の結果、ゲーリーらは彼らの物理の認識方法の、バンクスらは彼らの言語の解読にある程度成功した。バンクスは彼らの言語や認識方法にその「前後の向き」という概念をもたないという形態が深くかかわっていることに気づく。バンクスは、世界には最大と最小のどちらかがあり得るという概念を自明のものとして捉えるヘプタポッド達の思考を、言語の研究を通して受け入れていく。その結果、バンクスの世界認識に変化が生じる。そして、ヘプタポッドは結局、物質的なもののやり取りや、人間の文化における「関係」を結ぶことなしに一方的に去っていく。バンクスは自分の生が自由意志に基づくと同時に決定論的に規定されていることに気づく。ゲーリーとの結婚、娘の誕生とその死を「知り」ながら、バンクスはゲーリーと付き合うのだった。

3. 論点




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