2006/11/24
レポーター:高橋 
宮崎駿『風の谷のナウシカ』

J.作品解説
1.書誌データ

宮崎駿『風の谷のナウシカ』ワイド判、全7巻、徳間書店。
『アニメージュ』82年2月号から94年3月号まで断続的に連載。

2.作者
 宮崎駿。1941年生、東京都出身のアニメーション作家・映画監督・漫画家。株式会社スタジオジブリに映画監督として所属し、取締役として経営にも参加している。個人の事務所は株式会社二馬力で、主に宮崎の著作権関連の管理を行っており、自身は代表取締役社長である。
 初めは漫画家を志望し、あちこちの雑誌編集部に持ち込みをしたが採用されず、アニメーターとして東映動画に入社する。すぐに才能を現してメインスタッフとなると共に、結成間も無い東映動画労働組合の書記長に就任する。激しい組合活動を行いながら高畑勲・大塚康生らと共に『太陽の王子ホルスの大冒険』(68)を作り上げ、『パンダコパンダ』(72)の原案・脚本を務める。 NHKアニメ『未来少年コナン』(78)で本格的に演出家デビュー。持ち前の高度な作家性を発揮し、原作を大幅に改変したオリジナルなストーリーを展開し好評を得る。その後テレコム・アニメーションフィルムに移籍し『ルパン三世 カリオストロの城』(79)で映画監督としてデビュー。しかし同作はコアなアニメファンからは熱狂的に支持されるも、SFアニメ全盛の時代に合わず興行的に振るわなかった。この後しばらく干される。
 失意の宮崎に徳間書店の『アニメージュ』誌が連載漫画の企画を持ちかけ、同誌上で『風の谷のナウシカ』の連載が始まる。当時、メディアミックスや映画事業に意欲的だった徳間康快社長が劇場アニメ化を決断し、84年にアニメ映画として製作・公開される。映画『風の谷のナウシカ』は、『カリオストロの城』がテレビ放映され、その面白さが広く社会に認知されたことや、エコロジー・ブームの中にあったことと相俟って大ヒットとなり、作家としての宮崎駿が広く認知されることとなった。
 その後は徳間書店の出資を得て創設したスタジオジブリを舞台に、ほぼ2〜3年おきに長編作品を製作している。『天空の城ラピュタ』(86)、『となりのトトロ』(88)『魔女の宅急便』(89)、『おもひでぽろぽろ』(89・製作プロデューサー)、『紅の豚』(92)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(94・企画)『耳をすませば』(95・脚本・絵コンテ)、『もののけ姫』(97)、『千と千尋の神隠し』(01)、『ハウルの動く城』(04)、『ゲド戦記』(06・原案)。(wikiから編集)

3.登場人物
・ナウシカ:風の谷の姫。風使いの少女。14歳(映画だと16歳)。とんでもないカマトト。

・ユパ:風の谷の族長ジルの旧友でナウシカの師。腐海の謎を解くために旅を続けている。その剣の腕は腐海辺境一と賞されている。

・城オジたち:ミト、ニガなど5名。ナウシカの初陣に同行する。

・アスベル:ペジテの王子。トルメキアへの復讐心に捕われていたが、ナウシカとの出会いにより世界を救うために行動する。

・クシャナ:トルメキア王女。優れた軍人であり兵から絶大な信頼と忠誠を得ている。ナウシカとの出会いにより真の王道に目覚めていく。最萌え。

・クロトワ:軍参謀。平民上がりの野心家。ヴ王からクシャナの監視の任務を命じられていたが、結局クシャナの側に付く。

・ヴ王:トルメキア国王。先王の血を引くクシャナの謀殺を図っていたが、ナウシカと共にシュワ墓所の秘密を知り、クシャナに王位を譲る。

・3皇子:クシャナの異母兄3人。ヴ王の命で第2軍を率いて土鬼に侵攻する。1人は蟲の襲撃で死亡、残り2人は巨神兵と共にシュワに向かうナウシカに同行する。

・ミラルパ:神聖皇弟。超常の力を持つために兄ナムリスを差し置いて帝国の実権を握っている。

・ナムリス:神聖皇兄。肉体移植により若さを保っている。弟を謀殺して実権を取り戻し、クシャナとの政略結婚を図る。この人大好き。

・マニ族僧正:ナウシカが伝承にある「青き衣の者」であると感じ、皇弟ミラルパと対決。死後も霊となりナウシカを守る。

・チヤルカ:軍司令官。僧兵上がりで超常の力は無い。ミラルパの忠臣だったがナウシカとの出会いにより国土や国民を大海嘯から救おうとする。

・チクク:クルバルカ家の末裔の少年。超常の力を持ち、ナウシカを慕い行動を共にする。

・セルム:「森の人」の長の息子。腐海の異変を調べるために派遣された。ユパたちを救い、ナウシカを導く。

・オーマ:ペジテで発見された巨神兵。当初はトルメキアが奪取に乗り出すが、後に土鬼に奪取され聖都シュワにて蘇生され、ナウシカのことを母と思い込む。

4.あらすじ
 巨大産業文明が最終戦争によって滅んでからおよそ千年の後、世界は腐海と呼ばれる瘴気を発する森に覆われていた。腐海のほとりにある小国、風の谷の族長の娘であるナウシカは風をよみ、腐海の蟲と交感する不思議な力を持っていた。あるとき大国トルメキアと土鬼諸侯連合との間に戦争が起こり、風の谷も巻き込まれ、ナウシカは戦士として従軍することになる。戦争の中、そのカリスマで多くの敵と味方を惹きつけながら、ナウシカは世界の真理へと近づいていく。一方、土鬼は失われた巨大文明の技術を駆使し、蟲や腐海を改良して戦争に投入するが、生物兵器である粘菌が暴走し、大海嘯を引き起こしてしまう。人間よりも自然に心を寄せていたナウシカは人間に絶望し、蟲と共に新しい森の一部になろうとする。
 腐海に没したナウシカだったが、森の人により腐海の最深部に清浄な世界が生まれていることを知らされ、望みを取り戻す。ナウシカは多くの領土が腐海に呑まれても、未だ戦争を続ける土鬼を止めるため、土鬼の皇帝と対決する。皇帝はとうとう巨大文明を破壊した兵器、巨神兵を復活させるが、またも暴走し、土鬼軍はほぼ壊滅する。巨神兵はナウシカを母と思い込み、ナウシカは全てを知るために巨神兵と共に土鬼の聖都シュワへ向かう。シュワの墓所の封印を解き、墓所の主と対面したナウシカは巨大文明が仕組んだ世界救済計画を知るも否定し、墓所を破壊する。
 
5.背景・設定・用語
 テーマのみ取り上げられがちな漫画版ナウシカですが、詳細で奇抜でファンタスティックでエキゾチックな設定も魅力の一つかと。後の漫画・アニメ作品に影響を与える所も大きかったようです。

・巨大産業文明&火の七日間
 高度に発達した科学文明とそれを滅ぼした最終戦争。火の七日間が起こったのがAC3000前後、ナウシカの世界がAC4000前後。この「ほぼ完全に文明が滅んだ後、もう一度やり直している世界」「古代or中世と見せかけて実は未来」という設定は大人気。最近だとターンAとか。

・巨神兵
 巨大文明を滅ぼした超兵器。いわゆるロスト・テクノロジー。どう見ても汎用人型決戦兵器です。裁定者/調停者だったり人造の神だったり。

・腐海&王蟲&大海嘯
 火の七日間後に発生した人間に有害な瘴気を発する森。世界は腐海に包まれ、そこでは蟲と呼ばれる巨大な昆虫しか生息できない。その蟲の中でも特に巨大で神聖視されているのが王蟲。王蟲は数百年に一度、腐海のない土地に行進し、腐海を広げる大海嘯という現象を起す。実は腐海は汚染された世界を浄化するために巨大文明により造られたものだったことが物語の最後で明らかになる。

・風の谷&ペジテ
 腐海のほとりにある辺境諸国。エフタルと言う王国が栄えていたが、大海嘯により滅亡。以後、小国に分裂し、トルメキアの傘下に入る。ペジテは工房都市で、巨神兵が発掘される。

・トルメキア
 強大な軍事力を誇る君主制国家。大国とはいえ人口は減り続けており、土地・人的資源・技術を求めて土鬼に侵攻する。モデルとしてはトルコとローマがごちゃ混ぜな感じ。

・土鬼諸侯連合
 トルメキアと拮抗する勢力である国家連合で、神聖皇帝とその下の僧会が各種族侯国を統べている。宗教色が強く、各侯国の族長が僧侶だったり、国政を儀式化している部分もある。映画には登場しない。モデルはペルシャ?

・蟲使い&森の人
 蟲使いは蟲を操り、腐海で生活する人々で、一般の人びとには忌み嫌われている。不可触賤民的な位置づけ。その蟲使いたちが恐れ敬うのが森の人で、蟲使い以上に腐海と一体化し、腐海の真理に近い存在である。


K.論点
1.対立項の消滅、人間VS自然からラストへ

・初め。人間VS自然。正しいのは自然。
世界設定(腐海):人間の敵と思われていたが、実は世界を浄化していた。正しいのは自然。人間は愚か。「人間が自然と共存する道を選べば、明るい未来が待っている」という価値観。
主人公(ナウシカ):多くの人に慕われるが、人間に絶望し、王蟲と共に腐海の一部になる。
・ラスト。対立軸消滅、救済計画否定。
世界設定(腐海):実は巨大文明が製造した浄化装置だった。腐海により世界を浄化するが、今生きている人間は浄化された世界では生存できない。人間も腐海(自然)も巨大文明の残した救済計画の一部だった。
主人公(ナウシカ):人間の醜い部分(虚無)を受け入れる。救済計画を否定し、墓所(救済計画執行人&新人類の卵)を破壊する。人民には真実は伝えない。
 →これってどういうこと?
 →生命賛歌? 人工で作られたものでも、生まれたからには生命としての輝き/尊厳/可能性がある。醜く部分があってこその生命で、完全に浄化された清らかな存在など生命ではない。
「私達は血を吐きつつ くり返し くり返し その朝をこえて とぶ鳥だ!!」(7巻、p198)
「ちがう いのちは 闇の中の またたく光だ!!」(7巻、p201)
 →救済計画=マルクス主義? 91年ソビエト崩壊。94年に連載終了。
 →墓所が無くなれば、それを巡る戦争もなくなる(☆読書会で出た意見)。

2.人物
・ナウシカ

 『オデッセイア』に登場するスケリア島の王女ナウシカアと『堤中納言物語』の「虫愛づる姫君」がモデル。巫女で戦士で母性溢れるカリスマ戦闘美少女(救世主?)だったが、虚無を受け入れ、人間の業を背負いだす。オーマの死を望みながらも母として振る舞ったり、自分が生まれるために10人の兄姉が死んでおり、「母は私を愛さなかった」COをするなど、単純には萌えられない人物になっていった。
 →ナウシカってどうよ?
 →キャラクターというよりは作者の主張の代弁者(☆)。
 →ナウシカは人が死んでも泣かない。クシャナは部下が死ぬとひどく落ち込む(☆)。

・クシャナ
 トルメキア王ヴ王の第四皇女、トルメキア第三軍軍団長のカリスマ女将軍。序盤ではナウシカと張り合うほどの活躍を見せたが、後半になるにつれ埋もれていった。他の兄弟とは腹違いで、ヴ王や兄たちに疎まれ、命を狙われてもいる。母を毒殺された恨みから復讐を誓い、王位を狙う。ナウシカのことを認めながらも、自分は自分の道を行くという姿勢が素敵(3巻、p154)。その後、兄皇子/部下たち/ユパの死により復讐を忘れ、王道に目覚めていく。
→クシャナってどうよ?
→人間側の代表的存在(☆)。

3.内面描写/精神世界
 漫画版ナウシカは多くのオカルトファンや新興宗教団体の信者に愛読されているようですが(村上春樹『約束された場所で』より)、その辺の原因はいくつかの内面描写のアストラルっぷりによるのではないかと。どれも唐突に出てくるのがゆんゆんで素敵。

・虚無との対話(5巻、p.140)
 →この虚無って何?
 →ミラルパor上人orそれ以上の何か?
 →ナウシカの脳内上人(☆)?

・引き篭もるナウシカ&腐海深部(6巻、p.38,70,92)
 →現実と心象世界の境界が曖昧。とってもアストラル。

・庭園(7巻、p118)
 永遠/極楽浄土で暮らすことを否定→現世へ。ほぼ地獄のような展開の中で楽園を見せる。現実との遊離感がすごい。

4.その他
・ぶっちゃけナウシカってなんでこんな人気あるの?どこが面白かった?
・映画版との比較
・漫画としてどうよ?(☆)。
・絵が良すぎる(☆)。
・ご都合主義全開じゃね?偶然出会いすぎ。(☆)。
・その他なんでも。