2006/10/12
レポーター:高橋
ニール・D・ヒックス『ハリウッド脚本術』

0.書誌データ
ニール・D・ヒックス著 濱口幸一訳『ハリウッド脚本術』(p.10〜37)フィルムアート社 2001
(原題Screenwriting 101、1999)

1.作者
 スリラーとアクション・アドベンチャーを専門とする脚本家。代表作は『悪女のシナリオ』、『偽りのプロフィール』。UCLAでライターズ・プログラムの講師を務め、他の複数の大学で講座を担当している。代々木で漫画教えてる感じの人?
 続編として『ハリウッド脚本術〈2〉いかにしてスリラーを書くか』、『ハリウッド脚本術〈3〉アクション・アドベンチャーを書く』が出版されている。

2.概略
@ドラマは葛藤である

@.ドラマ=葛藤=対立
→単なるAとBの戦いではなく善と悪の戦い、異なる価値観の衝突。
→それの勝敗により、我々の生活に重要な変化をもたらす。

A.ドラマ=秩序を与えられた葛藤
主人公の人生の中で最も変化の激しい時期だけを抜き出す。時間を圧縮し、余計なものは省く(1週間くらいの話がいいとか。『ロミオとジュリエット』で5日)。

B.葛藤の書き方
・主人公を決める。
・敵対する者が誰かを決める。
・彼らが何について争っているかを決める(価値観)。
・その対立や葛藤で生じる変化が何なのかを決める。
・主人公がその変化のためにおこす行動の理由を決める(動機)。

(☆書き込み問題@)

A観客を満足させること
構成(始まり、中盤、結末)
@.始まり=誘引
 一つの問題を持った主人公を提示する。その問題は明確にそれと分かる目的に到達することで解決されるものでなければならない。そして意外な事件から彼を困難な状況に陥らせる。

A.中盤=期待
 主人公が小さな成功と失敗を繰り返し、ドラマをエスカレートさせていく。それらの出来事はバラバラのものではなく、ドラマが描こうとしている重要な変化の成否に欠くことのできない繋がりを持っている必要がある。ストーリーの文脈の上で面白い出来事であることが重要。それによってドラマ全体に対する期待が高まる。

B.結末=満足
主人公が内的な問題(始まりの一つの問題)と外的な問題(困難な状況)を共に解決し、価値ある目標に達する。こうしてこれまでの色々な出来事を引き取り、観客に「全体の統一(ゲシュタルト)」を見た、と思わせ満足を与える。

(☆書き込み問題A)

Bスクリーンのストーリーの要素
この順序で書く。@〜Cが始まり、D〜Gが中盤、H・Iが結末。
@.バックストーリー
 書きすぎちゃダメ。必要最小限に抑える。多くの設定があるのはいいが、全て表に出すことはない。
A.内的な欲求
 主人公の抱えている問題(失われた個人的特質)。本人が気づいていない場合もある。
B.キッカケとなる事件
 主人公が問題を解決するキッカケとなる事件が起こる。主人公は強制的に巻き込まれる。
C.外的な目的
 事件を解決するための外的な目的。それに達することで内的な問題も解決される。
「偶然が必然になる」by松岡正剛)。
D.準備
 外的な目的を達成するための準備期間。中年男性が体を鍛えるイメージ。
E.対立
 主人公が目的に到達するのを妨げる敵対者。主人公よりも圧倒的に強い。悪人である必要はない。
F.自分をハッキリと示すこと
 敵対者に追い込まれたことにより、内的な欲求に取り組むようになる。そして内的な変化を経験し、自分をハッキリと示す(覚醒?)。これは言葉ではなくアクションで表すのがいいらしい。
G.オブセッション
 外的な目的を達成しなければ、多くのものが失われることを示す。覚醒後はより重要さが増す。
H.闘争
 もう妥協はできない。主人公と敵対者は戦うしかなく、勝者は一人。騎兵隊登場は最悪。
I.解決
 主人公は勝利する。その後、経験を余儀なくされた内部の変化のため、次は彼が周囲の社会に重要な変化をもたらす。

(☆書き込み問題B)

3.まとめ
 しんどかった。映画はあんまり見ないし。でもそれなりに普遍的な部分もあったと思います。またアニメ、ゲーム(RPG&ノベルゲー)、漫画、小説なんかと比較してみるとそれらのジャンルの特質がある程度は見えてくるんじゃないでしょうか。そうだといいです。終わり。

4.読書会後の感想
 それなりに盛り上がったような。練習問題で取り上げられたのはオリジナルのものと「ジェイソン」「銀英伝」「なのは」だった。あと、その場で「Kanon」「エヴァ」「SEED」をやってもらった。ジェイソン以外真面目にないんじゃないかと。やっぱり問題になるのは時間的な尺で、映画は基本的に2時間前後だから主人公は一人、葛藤(テーマ)も一つなのがいいが、アニメは全50話とかあるんで主要なキャラもテーマも複数でないと尺を埋められないみたいです。あと日本でテンプレ系創作物というとジャンプ漫画が思い浮かぶんで、ハリウッド対ジャンプで日米テンプレ対決をして欲しいもんです。



ハリウッド脚本術補足 書き込み問題

@
・他の登場人物と対立する、1人の主人公

 彼の名前はアムロ・レイ。スペース・コロニーに住む機械いじりの好きな内気な少年。父親は連邦の新型モビルスーツ「ガンダム」の開発者。彼の住むコロニーがジオン軍に襲われ、ひょんなことからアムロはガンダムのパイロットとなり、ニュータイプとしての素質に目覚めていく。
 敵対者はシャア・アズナブル。実はダイクン家の長男で、ジオンを乗っ取ったザビ家に対する復讐のために身分を隠し、ジオン軍に潜伏している。ニュータイプの少女ララァ・スンと出会い、さらに彼もまたニュータイプとして覚醒することになる。

・特定の目的を達成するために、なぜそれらの登場人物は互いに争わなければならないのか。
 表面上は単に所属する勢力の違いからだが、根本には人類全体への見解の相違がある。恋敵でもある。

・ドラマが原因で、主人公の人生はどのように変わるか。
 軍に監視付きで引きこもり生活へ。とてもハリウッド的なタフガイにはなれない。

A
・第1幕 誘引

 居住コロニーが襲われ、ガンダムに乗って反撃。そのままパイロットになる。
・第2幕 期待
 ランバ・ラルとか黒い3連星とかビグザムとかと戦う。基本的に敵は強くなっていく。
・第3幕 満足
 ララァ死亡。戦争末期。壊れ気味になりながらも「僕には帰る場所がある…こんなにうれしいことはない」。

B
・バックストーリー

割りと長い。宇宙世紀、スペース・コロニー、連邦とジオン、1年戦争、MSとか。

・内的な欲求
 かなり短い。家庭内不和と戦争への恐怖くらい。

・キッカケとなる事件
居住コロニーがザクに襲われる。

・外的な目的
とりあえず生き残る。戦争に勝つ。セイラさんとハァハァする。

・準備
準備というか、敵と戦い続け、それが段々強くなっていく。

・対立
シャア登場。なんども戦う。超強い。

・自分をハッキリと示すこと
味方の死により、積極的に戦いだす。

・オブセッション
もう殺させない。でも死ぬ。

・闘争
ジオンには勝った。シャアとは引き分け。

・解決
正直、内的な成長はあんまり見当たらん。むしろ病んでいったような。

☆結論
 ガンダム自体がデータベース消費の走りみたいな作品なんで、一人の主人公に軸を据えるハリウッド映画とは対極にある気がします。自分でやっといてなんだけど、当てはめるのに無理があるような。