2006/5/25
レポーター:廣井
P・K・ディック「変種第二号/人間狩り (Second Variety) 」
(『パーキー・パットの日々』(ハヤカワ文庫SF)収録)

1.著者
P・K・ディック(Philip Kindred Dick, 1928−1982)
1928年シカゴ生まれ。50年代前半に作家としてデビューし、100篇以上の中短編と40を超える長編が発表されている。デビューしてしばらくは無名に近い状態が続いたが62年『高い城の男』がヒューゴ賞を受賞し注目され出すが、私生活の方は結婚と離婚を繰り返したり、アンフェタミンを常用したりと荒れ放題だった。世間で本格的なディック・ブームが訪れたのは本人が心臓発作で死去した82年の夏『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』がリドリー・スッコト監督により『ブレードランナー』として映画化されてからのことである。

2.あらすじ
 アメリカとソ連の全面戦争により地球全土は荒廃し、人類のほとんどが月に移って地球に残ったのは戦い続けている連合兵とソ連兵だけとなってしまった世界。連号軍が投入した新兵器”クロー”により追い詰められたソ連軍は停戦を提案する。交渉のためソ連の前線基地へ向かったヘンドリックスは、ソ連の基地は既にクローが自身を改良して人間そっくりに作りあげた変種1号と3号により壊滅させられたことを知る。ヘンドリックスは生き残ったソ連兵と一緒に連合軍の司令部に戻るが、既にそこの人間たちも変種により全滅させられていた。
 彼は最後に残った女性タッソーとともに<月基地>に逃げるべく宇宙船が隠されている場所へ行くが、最終的にタッソーに宇宙船で助けを呼びに行ってもらい、ヘンドリックスは地球に残ることになる。宇宙船が飛びたった後、襲いかかってくるタッソーの群れを見て、彼はタッソーこそ変種2号であった事を知る。

3.登場人物
ヘンドリックス……主人公。少佐。
デイヴィッド ……廃墟で暮らしてたクマのぬいぐるみを抱いた少年。と思いきや変種第三号。
クラウス……ソ連兵の生き残り。と思いきや変種第二号。と思いきや変種第四号。
ルディ……ソ連兵の生き残り。クラウスに機械だと怪しまれて殺される。
タッソー……メインヒロイン。と思いきや娼婦。と思いきや変種第二号。

4.「スクリーマーズ」(96年 加,米,日)
監督:クリスチャン・デュゲイ
製作:トム・ベリー、フランコ・バティスタ
脚本:ダン・オバノン
出演:ピーター・ウェラー、ロイ・デュプス、ジェニファー・ルービン
 B級SFホラー(サスペンス?)。戦争をしているのがどこか他の惑星で、その惑星の資源をめぐって開拓企業と連合軍が争っているという事以外は原作にかなり近い形で話が進む。原作を読んでから見るとストーリーの細かいところでいろいろ粗が見えたりして、少しションボリするかも。原作と違うのは、主人公との愛に目覚めたタッソー(劇中の名前はジェシカ)が他の変種二号から主人公を守り死亡→主人公は無事惑星を脱出という最後。たいした意味も前置きもなく、機械に愛情という概念を与えてしまうあたりが何ともあっちの映画チック。ちなみにスクリーマーっていうのは原作でいうところのクロー。けたましい奇声をあげながらヒトを襲っていました。ラストにもうひとひねりあるが、そこはこの映画唯一の見所だと思うので、伏せておきます。

5.論点と読書会での意見
(@)ミステリーとしての出来はどうか?
 負傷した仲間、子供とくれば次は女だということは誰でも考えるはず。一応変種四号が間に入ってるのでそこまでつまらない感じでは無い。
・ 実は主人公が変種であったという結末を予想してたので少しガッカリ。
・ ミステリーっつうか、サスペンス。

(A)人間の戦争→機械同士戦争
人類の進化?または、新たな種の誕生か。
・ これだけ社会性と創造力をもつロボットがヒトを殺すだけの機械から生まれる事に違和感。
・ 機械の進化過程がもうちょい突っ込んで書かれていたら面白かったけど、ただの恐怖演出の道具になっちゃってる感じ。
・人類がほぼ駆逐された後のロボット社会で、ロボットの変種として生きる人類を考えると、それは人類の進化といえるかも。
  
B)次の変種は何か?
今の時代なら、完璧超人系の美少年かね。
・ けが人→子供→一般兵という流れにクロー側の進化を感じる。もう完全に人間を模倣できるのだから、これ以上の進化はいらなくね?
・クロー同士の戦いへ移行してくなら相手の脳をハッキングするやつじゃね?
・ 「次はロリだ!」(元総代D氏が頑なに主張)

6.おまけ
<ディック映画化作品>
・ 『ブレードランナー』(82年, 米, 原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」)
監督:リドリー・スコット  主演:ハリソン・フォード
・ 『トータル・リコール』(90年, 米, 原作「追憶売ります」)
 監督:ポール・ヴァーホーヴェン  主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
・ 『バルジョーで行こう!』(92年, 仏, 原作「戦争が終わり世界の終わりが始まった」)
監督:ジェローム・ボワヴァン  主演:リシャール・ボーランジェ
・ 『クローン』(01年, 米, 原作「にせもの」)
   監督:ゲイリー・フレダ  主演:ゲイリー・シニーズ
・ 『マイノリティ・リポート』(02年, 米, 原作「少数報告」)
   監督:スティーヴン・スピルバーグ   主演:トム・クルーズ
・ 『ペイチェック』(03年, 米, 原作「報酬」)
   監督:ジョン・ウー  主演:ベン・アフレック
・ 『スキャナー・ダークリー』(06年, 米, 原作「暗闇のスキャナー」)
     監督:リチャード・リンクレイター  主演:キアヌ・リーヴス