開催日:2005/5/26
レポーター:廣井
課題:アイザック・アシモフ『バイセンテニアル・マン』
RESUME
アイザック・アシモフ著『バイセンテニアル・マン』(”The Bicentennial Man”)
池央耿訳「聖者の行進」創元SF文庫 収録
1.あらすじ
家事用としてマーチン家にやってきたロボット、アンドリュー。彼は本来ロボットにあるはずのない彫刻の才能を見出され、作った作品を売り自分の財産を手に入れる。やがて、アンドリューは自由に生きる権利を手に入れ、服を身につけ、人間そっくりな体となりひたすら人間になる事を望むが、世間が彼を人間と認める事はなかった。人間と認めてもらうには何が足りないのか?今まで人間になるため努力し様々なものを手に入れてきたアンドリューが最後に欲したものは生命の有限性、つまり「死」だった。彼は自分のポジトロン頭脳に電位が徐々に下がっていくような改造を施し、寿命を手に入れたのだ。死を受け入れた彼の行為は人々の心を動かし、彼の誕生200年に当たる記念式典の日「二百歳の人(バイセンテニアル・マン)」と呼ばれ、世界中の人々から人間として認められるのであった。
2.著者
アイザック・アシモフ(1920−1992)
最近読書会でやったR・A・ハインラインやアーサー・C・クラークとともにSF黄金時代を支えたSF3大巨匠のひとり。『われはロボット』の映画化や「トリビアの泉」で彼の名言が取り上げられるなどして今や日本国内で最も有名なSF作家といっても過言ではないだろう。旧ソビエト出身だが幼少のころに家族でアメリカに移住しニューヨーク、ブルックリンで育つ。1939年コロンビア大学を卒業し、1948年には化学博士号を取得している。小説を書き始めたのは大学在学中。1939年にSF小説の投稿をはじめ以後<銀河帝国興亡史>シリーズや<ロボット>シリーズなど多くのSFを発表した。SF以外にも<黒後家蜘蛛の会>シリーズに代表される純粋ミステリーや一般向けの科学解説書など様々な本を執筆しており、その著書は500を超える。1992年4月6日、心臓手術の際の輸血で感染したエイズにより没した。
3.ロボット工学三原則
ロボットや人工生命というものはSFで古くからよくある題材であるが、アシモフがこのロボット工学3原則を打ち出す前と後ではそれらの作品の様子がまったく違う。3原則以前のロボットを扱ったSFはメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』に代表されるような人間の行き過ぎた知的欲求に警鐘を鳴らし、魂のない知的生命を作り上げることを強く戒める作品が常だった。
それに対しアシモフは「知識はたしかにそれ自体危険をはらむ、しかし危険に対する反応が知識からの後退であってよいものだろうか?」「ナイフには安全に握れるよう柄がついているようにどんな人工物にもその危険を最小限にとどめる考案がなされている。ならばロボットは機械としてできうるかぎり安全なものとして設計されねばならない」としてロボットが絶対に従うべき3つの原則を考え出した。本を開けば載っているので条文は省略するが、要約すると何よりも優先される第1条で人間の生命を尊重し、続く第2条で人間に絶対服従することを定めている。最後の第3条がロボット自身の自己保全になっているわけだが、以上から分かるとおりロボットは原理的に何があっても人間に危害を加えることができなくなっている。これはそれまでにあったロボットが創造主を破滅させるようなプロットとは正反対のロボット像を作り出し、また広く一般にも受け入れられることとなった。今ではロボットもののSFを書くとなると誰もがこの3原則を意識し、これを大きく逸脱するような作品はほとんど見られないといってもいいほどである。
4.個人的感想
ロボット3原則ものの短編では珍しく泣けるほどいい話。
・ ロボットの自由(p.253〜)
実質的にはほぼ自由に生活できているわけだし、自由権が認められたからといって人間に命令されれば従わずにいられないのにも関わらず、自由であると認められることを欲している。一見意味がなさそうだけど大きな意味をもつことっていうのはカッコイイ。
・ 図書館に行こうか、行くまいか(p.262〜)
あのモジモジ感がたまらん。
・ 悪漢たちによる暴行(p.264〜)
あんまり深く言及するつもりはないけど………外に出る前のモジモジとあいまっていい味出している。
・ アンドリューの性格
作品の後半に差し掛かってくるとアンドリューはだんだん人を使うようになっていく。本来ロボットは人間に対しへりくだった態度でのぞむものなのに。人間と似たような生活が彼を変えたのか、それとも何か他の要因があるのか……。面白い演出だが個人的には彼の魅力を多少損ねているように感じる。
・死亡エンド
マーチン一族との関わりの中で大切な人たちの死を体験するシーンをいくつか入れといて最後は自分が死を受け入れることで人間として認められるというのは流れ的にきれいです。最後に手に入れる人間性が「死ぬこと」っておセンチな感じ。
5.論点
(@)なぜ、アンドリューはああまで人間になりたがったのか
(A)アンドリューの人間に対する振る舞いの変化は何がもたらしたのか
(B)ロボットと人間の線引きをどのへんでするか
(C)何か気になるところがあったら適当に語って