開催日:2005/4/16
レポーター:出口
課題:ロバート・A・ハインライン「鎮魂歌」
RESUME
ロバート・A・ハインライン「鎮魂歌」
中村融ら編「20世紀SF@1940年代星ねずみ」(河出書房新社)収録
・ あらすじ
主人公D.D.ハリマンは、まだ誰も人類が宇宙に出るなどと想像すらしなかった幼少の頃より月に憧れており、大人になったら必ず月に行くことを決めていた。そして大きくなり、並々ならぬ努力と優秀なスタッフの協力によって月と地球との間を往復する定期ロケットを運営する会社を打ち立てることに成功する。しかし、会社はハリマンを失うわけにいかず月へ行くことを許さなかった。そして月日は流れ、彼も歳を取った。既に老いを理由に月に行くことは出来ない。身体がもたないと判断されているからである。莫大な資産をもち、月と地球を往復するための会社を経営しているにも関わらず、幼少の頃に見た夢を果たすことが出来なかった。そこでハリマンは、クビになった操縦士と機関士を雇って不法に月へ行くことにする。当局に嗅ぎ付けられ追い込まれながらも間一髪でロケットに飛び乗り、何とか離陸を決行出来たのだが、着陸の衝撃にハリマンの身体は耐えられず、月に着き望みを果たすと同時に彼は生涯を終えるのだった・・・。
・ 作者紹介〜ハインライン
ハインラインと言えば、「我はロボット」のアシモフや「2001年宇宙の旅」のクラークと並び称される三大SF作家の一人であり、SFの基礎を作るのに貢献した偉大な作家の一人である。軍を結核で退役してからカリフォルニア大学で物理学、数学を学びカリフォルニア州議員の選挙に出馬するも落選。金銭に困っているときにふと目にした雑誌の新人作家コンテストの賞金に目が眩み、「生命線」(原題”Life
Line”)を投稿。見事掲載されデビューを果たす。このとき未だ1939年。それから半世紀にも渡ってSFを書くことになるとは、当時は本人すらも思わなかっただろう。多くの話題作を発表しており、そのどれもが今なお楽しめる素晴らしい出来なのだが、何故か三大SF作家の中でハインラインだけ殆ど絶版。入手困難なのが悲しまれる。彼の宇宙に対する憧れは非常に多くの人の共感を呼び、宇宙開発へ進む研究者を増やしたことでNASA功労賞が与えられた。火星のクレーターに“Heinlein
Crater”(ハインライン・クレーター)というものまである。無類の猫好きで、名作「夏への扉」(ハヤカワ文庫)に登場するピートなどからもそれが窺える。長編「宇宙の戦士」(ハヤカワ文庫)で右翼と批判されることが多いが、「月は無慈悲な夜の女王」(ハヤカワ文庫)では左翼と言われたりもする。「異星の客」(創元SF文庫)はヒッピーの聖典と呼ばれるなど、多くの顔を持った作家である。
・ 何故この作品を選んだか
昔から人間は宇宙に対して多大な関心を寄せてきた。古代の人々が空を眺め、星を眺めてそれらを理由付けしていったことで多くの神話が生まれたことからもそれがわかる。その中でも地球から最も近くにある天体「月」は、やはり太陽を除く他の天体より、多大な関心を寄せてきたと私は思う。英語で“Lunatic”といえば「月の」と言う意味だけでなく「狂った」といった意味を持つが、まさに月によって狂わされた人々、むしろ月に狂った人々がいた。そして当然のことながら、ハインラインもその一人である。彼ほど月に憧れ月に飢え、月の魅力を味わい尽くした人はいなかったかもしれない。実際彼は多くの月に関する小説を書いており、そのどれもが彼の月に対する、そして宇宙に対する期待と情熱をよく表現している。その中でもこの作品は、月に憧れたハリマン氏の心情が情緒を生み出し涙を誘っており、私の中では最高のSF作品の一つである。また、ハインラインは作家紹介でも言ったとおり三大SF作家に含まれているのだが、中でも彼は読みやすい。新入生のみんなが最初に触れるべきSFを考えたときに、まずハインラインの名が頭に浮かび、次いでこの作品のことが思い出されたのは最早必然である。みんなの率直な感想を聞き、意見の交換を行っていきたい。
・ ハインラインお勧めリスト(全く強制ではありません)
福島正実 訳「人形つかい」(ハヤカワ文庫SF)
福島正実 訳「夏への扉」(ハヤカワ文庫SF)
矢野徹 訳「月は無慈悲な夜の女王」(ハヤカワ文庫SF)
森下弓子 訳「ルナ・ゲートの彼方」(創元SF文庫) ※ジュブナイル
矢野徹 訳『デリラと宇宙野郎たち〈未来史1〉』(ハヤカワ文庫SF) ※絶版
矢野徹 訳『地球の緑の丘〈未来史2〉』(ハヤカワ文庫SF) ※絶版
矢野徹 訳『動乱2100〈未来史3〉』(ハヤカワ文庫SF) ※絶版
・ 参考資料
SFマガジン 第三十九巻 第五号 1998年5月号 (ハヤカワ書房)
中村融ら編「20世紀SF@1940年 星ねずみ」(河出書房新社)
“西村屋” http://homepage3.nifty.com/nishimura_ya/index.htm
“My Sci-Fi Collections” http://ebby.hp.infoseek.co.jp/