DATA

開催日:2004/12/24
レポーター:浜岡
課題:ジュディス・メリル『SFに何ができるか』(晶文社)

RESUME


Judith Merill 「SF―その意義を問う」
―『SFに何ができるか』(浅倉久志訳、晶文社、1972年)より
2004/12/24
Reporter:浜岡@電車男みたいな話が実際にあるわけないだろ!バーカ!
【作者略歴】
 1923年生、SF作家、評論家。「ママだけが知っている (『アスタウンディング』1948年6月号、邦訳SFマガジン60年11月号掲載)」でデビュー。ほか、日本では1956年より12年間刊行された『年刊SF傑作選』(創元SF文庫)の編者として知られ、また日本SFを英語圏へ積極的に紹介した人間の一人。ニューウェーブの時代を代表するSF人であり、本論文の執筆(1965年)を境に、ヴェトナム反戦運動のためカナダへ移住。SF評論の第一線から身を引く。故矢野徹、伊藤典夫の友達。浅倉久志は微妙にビビってったぽい。1997年歿

【概要】
1.「Science-Fiction」とは何か
◆Science=Technologyという順応
◆今日のSF
 →ジャンルの伝統、現代文学の技法の、二十世紀の科学思想への適応
→FictionのScienceへの追求、文学の原点への回帰

◆SF的小説の展開
 

       ↓

◆SF小説の類型
@ 教育的ストーリー:新しい科学アイディアのための「仮想論文/擬似小説」
    Ex)ガーンズバック系の小説群

 A 伝道的ストーリー:人間社会の技術より行為に関心を寄せた寓話物語
    Ex)レイ・ブラッドベリ

B 思弁小説(スペキュレイティヴ・フィクション):
 「現実」に関するなにものかを、客体化、外挿、類推、仮説などを通して探求する物語

 →サイエンス・フィクションのエッセンスが存在するのはBのみである

2.アメリカ文学と揺籃期

◆2-1. 20年代初頭/「リアリズムの外延」としてのSF
 ・細分化したパルプ・フィクションの一分野としての出発
  →『アスタウンディング』:教育的ストーリー、「論文小説」
  →『ウィアード・テイルズ』:伝道的ストーリー
   *思弁小説は『ウィアード』に伝道的要素と共に散見される

◆2-2. 30〜40年代/問題小説と思弁の発生
 ・「進歩への問い」の不在
   →問題小説の浮上:機械をいかいに使うか、技術をいかに応用するか?
 ・キャンベル・ジュニアの登場(1937年)
   →20年代拡大した諸分野「科学」のSFへの適用
    @ストーリー A思弁的展開 B文章能力 の向上
     *より良い作家たちの登場、科学派/伝道派の融合
 ・キャンベル・ジュニアの限界と新秩序
   →エンジニア的思考とイギリスSFの出発
   →雑誌新時代とSF雑誌戦国時代へ

◆2-3. SFブーム(1945~55年)とその後
 ・ブームの要因
   →宇宙開発、原子力時代、「宇宙時代の百科事典」としてのSF
→思弁小説の視野:戦後世界のフロンティアへ
   →不可賤民ならざるSF作家の誕生
 ・アンソニー・バウチャーと『ギャラクシー』
   →「文学」の多様性の尊重と限界
   →「Science Fiction(キャンベル)」と「Science Fiction(バウチャー)」
 ・文学的地位向上の努力と対立

3.SF像の転換
◆レジナルド・ブレットナーの「SFの進化(1952年)」
 ・「科学と文学の相互作用」としてのSF
   →科学的本質、人間的問題と経験の尊重
・未来のSFのみならず、過去、現在も可能
 ・SFの姿勢
   (1)読者、書き手を拘束しない (2)虚偽の二分法の文学ではない (3)統合的である

◆メリル=ブレットナーのSF観
「サイエンス・フィクションにとって、作家の真の研究対象は人間である。人間、そして人間がなし、考え、夢見るすべてのこと、そして人間が作り上げる全てのこと、そして人間が知るであろうすべてのこと―理論と事実、自己探求、音楽と数学と機械。これらのすべては人間的価値と有効性を持っている。なぜならそれは人間に関するものだからである」


【参考】
◆ヒューゴー・ガーンズバック(Hugo Gernsback, 1884-1967)
 雑誌編集者。1926年、初のSF専門パルプフィクション・マガジン、Amazing Storiesを創刊。「現代SFの父」、ワールドコンの投票によるSF文学賞「ヒューゴー賞」にその名を冠せられる。

◆ジョン・W・キャンベル・ジュニア(John W. Campbell Jr., 1910-1971)
 雑誌編集者。1937年、Astounding Stories(1930年創刊、1960年、Analog Science and Fictionに改名。)編集長に就任。社会学的関心をSFに導入。ハインライン、アシモフ、ヴァン・ヴォークトらを開拓。のちの黄金期を築く。ガーンズバックとは作家や編集スタッフの引き抜き合いとかいろいろあったみたい。

◆アンソニー・バウチャー(Anthony Boucher, 1911-1968)
 雑誌編集者。1949年よりAmerican Fantasy and SF stories編集長。アルフレッド・ベスターらを開拓。1951年にアメリカ推理作家協会会長に就任。

◆ニューウェーブ
 巽孝之によれば、「旧来の外宇宙的指向を批判し、内宇宙的指向をつまびらかにした」SF作品の潮流。一般的に英国人SF作家J・G・バラードのエッセイ「内宇宙への道はどちらか?」(1962年、SFマガジン1997年3月号に訳載)にはじまるとされる。科学時代に特有の問題を従来の文学と違う角度から探求する作品として、マイケル・ムアコックが編集長を務める英SF雑誌New Worldsを中心に、「思弁的小説(Speculative Fiction)」を展開した。代表的作家にバラード、ブライアン・オールディス、ロジャー・ゼラズニイ、アーシュラ・K・ル・グィンなど。


【コメントと論点】
 本小論は先述のニューウェーブの潮流の中のSFエッセイであり、何よりSFの中核をスペキュレイティヴ・フィクションにあると捉えています。筆者のメリルが「評価には15年がかかる」と述べた時代からはや40年を経たわけですが、論点として

@今、スペキュレイティヴ・フィクションってどうよ

A従来(スペキュレイティヴ以前)のサイエンス・フィクションの評価すべき点は何か

Bワークショップはどれ系(三類型のうち)がお好みデスか?


といったところです。これ以後もサイバーパンクだなんだと現れるわけですが、現在におけるスペキュレイティヴ・フィクションの意義を問うとします。


【参考文献】
・中村融・山岸真共編『20世紀SF3 1960年代』河出書房文庫、2001年
・巽孝之編『日本SF論争史』草書房、2000年
・マイク・アシュリー(牧真司訳)『SF雑誌の歴史 パルプマガジンの饗宴』東京創元社、2004年
・『SFマガジン』1997年12月号

 

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