DATA

開催日:2004/5/2
レポーター:海老原
課題:J・ティプトリー・Jr「煙は永遠に立ち上って」「一瞬のいのちの味わい」(『老いたる霊長類の星への賛歌』 ハヤカワ文庫SF)

RESUME

合宿読書会@魚萬 
==何度目だティプトリー==
5月1日
レポーター:海老原
――全体的に手抜きですまんな…。

課題: “Her Smoke Rose Up Forever” & “A Momentary Taste of Being”

“Her Smoke Rose Up Forever”
ポイント:
率直に言って捉えどころのない話なのだが、それでも
(1) 全体像を捉えようとすればどうなるか
(2) なぜ“Her Smoke”なのか
(3) ポスト・ホロスコーストSF」として位置付けられることもあるが、なぜか
の3点について諸氏の意見を伺いたい。

“A Momentary Taste of Being”
あらすじ: 
地球は人間であふれ(200億から300億)新たな土地を求めて人類は宇宙へと旅立っていった。その宇宙船のひとつであるケンタウル号の3つある探査船のうちの1つ〈チャイナ・フラワー号〉が人間の居住可能な惑星を発見した。ケンタウル号にロリーと異星生物が一緒に乗った探査船が戻ってきて数週間後から物語は始まる。
イエラストン船長はじめケンタウル号の乗組員はロリーの心身状態を調べていた。おかしなところがないと判断されたロリーは隔離状態から解放される。そして今度は探査船に積み込まれた異星生物の検査を始めることになった。厳重な注意のもと探査船は開けられるが、その瞬間異星生物はピンク色の光を発し、船員はみなその光にひきつけられてしまう。運良く(悪く?)ひきつけられることのなかった、ドクター・エアロン・ケイは再び異星生物を封印するが、時既に遅く船員たちは皆、魂の抜けたような状態になっていた。エアロンは、人間が〈精子〉であり異星生物が〈卵子〉ではないのか、という仮説を思いつき物語は終わる。

キャラクター:
ドクター・エアロン・ケイ…医者
*ロリー…ドクター・ケイの妹。〈フラワー号〉乗組員。
イエラストン船長…イギリス人。ケンタウル号全体の〈父親〉役だが、実はアル中。
フランク・フォイ…ケンタウル号の保安係官。
ソランジ…ドクター・ケイの恋人。
ドン・パーセル・・・α探査隊の隊長。
テモフェイエフ・ブロン…β探査隊の隊長。
*クー隊長…γ探査隊の隊長。
*メイ・リン…γ探査隊の隊員。
*リュウ・エンドウ…同上。
*小クー…同上。
タイガー・タイ中尉…異星生物と接触し、虚脱状態に。
レイ・ブスタメンテ…技術者。

ケンタウル号…総員60人、3つの探査船を持つ。人類史上2つめの惑星探査船。

ポイント:
(1) 性的衝動
引用(1)‐(4)からもわかるように、ロリー(と異星生物)の帰還を境に、船員たちは「発情」し始めている。

(2) 受精
引用(5)参照。人間は〈精子〉…悲しいな。〈精子〉のしっぽのメタファーがなんとも物悲しい。無駄遣いは良くない。

(3) 誕生
〈精子〉と〈卵子〉の結合によって、ではいったい、何が生まれるのか? ロリーの言うように人間の「超越」なのか? 引用(6)‐(7)参照。

(4) 近親相姦
ドクター・ケイとロリーは近親相姦。お兄ちゃん! どうすんべ?

(5) コロニアリズム=植民地主義
新しいフロンティアを求めるコロニアリズムは別に過去の話に限ったことではなく、未来においてもこの作品のように「新しい惑星を求める」という形で容易にあらわれるだろう。探査船の名前が〈チャイナ・フラワー号〉というのも興味深い。あるいは引用(8)のイエラストン船長の演説からもこの宇宙の旅そのものがコロニアルな欲望に突き動かされていることを確認できる。

(6) コロニアルな欲望=性衝動というメタファー
小説冒頭のドクター・ケイが見るケンタウル号=ファルスという夢から、コロニアルな欲望を性衝動へのメタファーで捉えることができるだろう。そしてこの性衝動がメタファーでなくなる瞬間というのが、最後の〈受精〉の瞬間なのである。

(7) その他気が付いたことなど
物語としては、中盤のイエラストン船長の演説ぐらいから雰囲気が変わる。
やたら「中国人」と繰り返される。それもネガティブなイミアイにおいて。国連を介しての計画なのだが、おそらく大国の論理が影で動いているのではないだろうか(グリーン・シグナル合戦にも見られるように)。

(8) Mark Siegel


引用:
(1) この任務の選定基準のひとつは性的衝動の低いことだった。(131)
(2) 妹にたいするセックスの幻想、もう何年もなかったことだ。それは彼女、タイ、あの異星生物とともに封じ込めてある――大きな腕いっぱいのソリ、それがおれには必要なんだ。(185)
(3) 艶笑喜劇のなかの人物のように、奇妙なくらいうろたえながら、エアロンは男女共用の宿舎の娯楽室を大またに通り抜ける。物陰に大勢のカップルがいるのがおぼろげにわかる。(196)
(4) 「赤ん坊」エアロンはめまいがしそうだ。この言葉はもう何年もケンタウル号では聞いたことがない。(202)
(5) 配偶子にすぎないのだ。対になった二形性だ。ふたつの形、つまり雄の精子、雌の精子――何かの生殖質の片割れなのだ。とにかくそれだけは完全な存在ではない。何かの生き物、何かの品種の配偶子の片割れなのだ。たぶん、かれらは宇宙に生きるものなのだろう。わたしはそう思う。彼らの配偶子は宇宙に生きているのだ。だぶん彼らはは知性さえ持たないだろう。…(277)
(6) 「ぼくたちは人間なんだ」「人間は変わらなくちゃいけないのよ…真実人間的であるためには、わたしたちはそんなものをそっくり捨て去らなければいけないのよ」(215)
(7) 「でももう平気ね、絶対に。みんなほんとうに優しくなって、ほんとうに幸福になった戻ってきたもの。みんなすっかり変わったのよ、何もかも超越したの。あれはわたしたちを待っているのよ、アーン、わかる? あれはわたしたちを救いたがっているの。わたしたちはほんとうに人間らしくなれるのだわ」(261)
(8) 「ありあまるほどの時間のなかでのわたしの仕事のひとつは…わが惑星上における人間の探検と移住の歴史を読むことでした…」(178‐79)
(9) On one hand, this dream can be seen as a sexual representation of man’s creative drive to explore and conquer, (and in this sense colonize), the drive that in so many of Tiptree’s stories leads both to man’s greatest triumphs and to his ultimate destruction. (Again sex and death are synchronous.) However, the dream also turns out to be a fairly literal foreshadowing of the doom that awaits the crew when they discover an apparently habitable planet that is host to a species of “giant cauliflowers” that turn out to be the eggs for which humans are the sperm.


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