DATA

開催日:2003/10/24
レポーター:関根
課題:山口泉「圧政としてのファンタジー 『想像力のファシズム』廃滅のために」(ユリイカ臨時増刊『総特集 宮崎駿の世界』(1997)

RESUME

Intoroduction

山口泉:1955年生まれ。
77年「夜よ 天使を受胎せよ」で第13回太宰治賞優秀賞。
89年「宇宙のみなもとの滝」で第1回ファンタジーノベル大賞優秀賞。

[小説]
吹雪の星の子どもたち(径書房)84
旅する人びとの国(筑摩書房)84…日吉図書館にあり
世の終わりのための五重奏(河出書房新社)87
悲惨鑑賞団(河出書房新社)94
オーロラ交響曲の冬(河出書房新社)97
ホテル・アウシュヴィッツ―世界と人間の現在についての七つの物語(河出書房新社)98…日吉図書館にあり
永遠の春(河出書房新社)00
神聖家族(河出書房新社)03

[評論・エッセイ]
星屑のオペラ(径書房)85
アジア、冬物語(オーロラ自由アトリエ)91
ホテル物語―十二のホテルと一人の旅人(NTT出版)93
「新しい中世」がやってきた!(岩波書店)94…日吉・三田図書館にあり
テレビと戦う(日本エディターズスクール出版部)…95日吉図書館にあり

[ホームページ]
魂の連邦共和国へむけて

[大体の内容・抜粋]
○ファンタジーの三重の否定
・現存するファンタジーの大半はファンタジーですらない
・一部の作品群のみがファンタジーと称されるのは正しくない
・物語を強制する専制権力の臭み

○すべては歴史的・社会的・政治的存在である

○ファンタジーにとって実在した歴史とは?
・宮澤賢治と甲午農民戦争・15年戦争
・作者の有限性の捨象―実在の歴史に対し従属的

○超科学的・超歴史主義
・リアリズムの重力の無視
・外在的歴史の軛がない―先験的に成立
●ファンタジー=科学と歴史を舐めた貧困な想像力の不潔な庭
・全てが予め設定されていることの雑駁で剥き出しの権力性

●ファンタジーは世界の不正の淵源を問わない
・成立するための根拠でありその否定は自分の存在の否定
=差別による世界の構造の偏倚を要請

○シンデレラ姫とアリーテ姫―君主制・封建制
(女性=性的客体)

●人間の個別の存在条件に対する圧制・想像力のファシズム

○イデオロギー性の隠蔽⇔いかなる表現もイデオロギーでしかない
・イデオロギーでないふり―ただ自らに同調する論議を行う者のみが強直した教条主義でない
=排他主義・不可知論・判断停止のイデオロギー
・差別性を差別的構造の上に立って祖述し複製しているにすぎない

●ほんとうの物語
=歴史性と科学性を否定しない
=歴史性と科学性を根底的構造の力とする
=自らと世界の差別性を可能な限り廃滅すること

○ほんとうの物語は到来しきっていない
処罰され駆逐され廃滅されなくてはならない物語が余りにも瀰漫しすぎている

・筆者の言う想像力のファシズムとはどのような状況か
・批判されているファンタジーとはどんなものか
・筆者の議論はSFの状況にも当てはまるか
・「ほんとうの物語」とはどのようなものか、本当にあるのか

[参考]
アジア、冬物語(オーロラ自由アトリエ)91、より
第一章“ファンタジー”の時代と生と死
「ファンタジーとは、想像力の乖離を行使しなければもはや修復不可能な世界のさまざまな矛盾や問題のありかとその形を鮮明に指摘し、問いかけるための表現形式である。」

COMMENTS

実のところまともな読書会が行われることを余り期待していなかったのですが、蓋を開けてみると二時間半に及ぶ議論となりました。
話題となったのは「想像力のファシズム」って何だ? ということと「ほんとうの物語」ってどういうのだ? ということでした。
参加した人達は、どういうことよ? と悩む人、頭に来てしまっている人、開き直っている人などなど色々な反応をしておりました。まず反論としてはそれ言っちゃ終わりだろ、というのがありました。ジャンクなんだからいいんだとか、判断停止で何が悪いとか、そういうのでした。「ほんとうの物語」に関しては、山口泉の挙げる条件はハードルが高すぎるという主張がありました。また、それはファンタジーじゃなくてノンフィクションじゃないかとか、どこまでフィクションに入れるつもりなのか疑問だという意見もありました。それから唯美主義的なものを無視するべきじゃないという声もありました。いわゆる「動物化」との比較を行う人もおりました。個別具体的な話がしにくいものでしたし、難しい話がされていたように思います。
まあ……中々白熱した議論になりました。参加者の中に、自分の発した言葉によって自分が傷ついていく有様を見ることになりました。まあ本人は気にならないでしょうが。なんにせよ、今まで慣れ親しんできた幾つかの作品や自分の嗜好を否定するかのような挑発的な文章に色々嫌な気分にされたのではないでしょうか。そのむかむかこそ私がこの読書会に望んだものなので、皆がそれを感じていたのなら成功というものです。
この読書会の反省点と言えば、私自身は何だか山口泉の弁護人みたいになってしまったことで、判りにくいところや誤解しているところなどの説明しているだけでした。まあ、レポーターの役割りの半分くらいしか果たせなかったということです。それからSFの状況に関しても話し合いたかったのですが、時間が足らなかったようです。それにしても、難解かつ初めて読んだ時には必ず不愉快な思いをするであろう小論文を題材にした読書会に、二時間半も付き合ってくれた方々に対し、まったく不要かつ余計なものではありますが、感謝を捧げてしまいます。

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