DATA

開催日:2003/8/29
レポーター:吉見
課題:沢木耕太郎『テロルの決算』

RESUME

(注意!)
この読書会は「深夜の読書会」です.題材はシリアスな本ですが,真面目に取り上げたり取り上げなかったりします.政治的に正しいとか正しくないとか,社会正義だとか政治家とテロリストの善悪だとかを真剣にこの場で討論することはほとんど意味が無いことです.脇道に逸れまくりながら楽しく宴会ができれば良いと思います.

1.ストーリー

1960年10月12日,日比谷公会堂での自民,社会,民社の三党党首立会演説会において,社会党委員長,浅沼稲次郎が刺殺される事件が発生した.事件の様子はテレビ放送用に録画されており,事件発生時の写真も撮影されていた.犯人は十七歳の少年であり,その背後関係が主な捜査対象となった.
犯人である山口二矢は事件時,所属していた右翼団体から離脱しており,「組織ではなく,個人の責任で行動を起こした」という逮捕後の主張とその後の自決,事件から語り伝えられる「伝説」から,事件は大きく取り沙汰されることとなる.
本書『テロルの決算』では,浅沼と山口の二人の生涯を辿りながら,彼らふたりの一瞬の交差を描く.

2.話題

以下の話題を暫定的に提示する.
・浅沼が組織よりも自分の意見を優先し,なぜ「米国は日中共同の敵」と発言したのか?
・山口二矢の「伝説」は真実だったのだろうか?
・浅沼が変えたかったモノ,山口が否定したかったことは,いったい何であったか?
・ぶっちゃけ,今のこの社会,どうなの?

3.個人的意見

本書はSFでは無い,とほぼ言い切れるため,定時外の読書会での題材とさせてもらいました.この本をなぜ選んだかというと,昨年の『光の雨』と多少なりとも対比できそうな部分があったことと,沢木氏の小説はなかなかおもしろいじゃないかと思ったことが理由に挙げられます(特に『深夜特急』は素晴らしいと思います).
山口二矢がどんな人間であるかについて,私自身は,周囲の状況に感化されやすい割に,信念を曲げない,今でも割とよくいるタイプの少年だったのではないか,と考えています.少しだけ特別だったのは,右翼組織に所属した少年たちの中で,組織を単なる流行りモノと考えず,右派の概念を理想化して疑わなくなってしまったこと,しかし行動力が優れていたこと,くらいなのではないでしょうか.
沢木氏は山口の「伝説」があったというように小説をまとめています.私は「伝説」の真偽はどうであっても構わないのではないか,と思います.
山口がどう考えたのであっても,事件現場に立ち会った人間の中である者には「伝説」として解釈され,ある者にはそうではないと解釈されたのでしょう.当事者が死亡して時間がたった今では,「伝説」が本当であったか否かを考えるより,なぜ「伝説」が伝聞され,今でも形を留めているのか,を考える方が建設的だと思います.
日本現代史のこのような事件は,単なる殺人事件ではなく,左派か右派か,といった政治思想上の問題が絡んで語られざるを得ません.その中で本書は比較的両陣営に公平な立場を取っており,私はノンフィクションとして良い作品であると評価できるものだと考えています.読書会を踏まえて,このような小説についても,興味を持っていただければこれ幸いでございます.
ヾ(゚∀゚)ノ ハイハイ!

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