DATA

開催日:2003/7/3
レポーター:大野
課題:三雲岳斗「龍の遺跡と黄金の夏」

RESUME

三雲岳斗「龍の遺跡と黄金の夏」

 

「M.G.H.」を書いた著者による短編。
話としては、気候の変化した未来、古代遺跡の謎、驚愕の生命体ドラゴンとは、密室殺人の犯人は誰、と色々期待を抱かされるような内容が満載な話なのですが。あらすじとしては、ドラゴンのトラブルをどうにかする人が、ドラゴンのいる遺跡に出向きついでに殺人事件まで解決してしまうという、戦闘力が異常に高い探偵さんのお話になってます(まあシャーロックホームズも確か無駄に戦闘力が高かったけど)。
ではこの短編の素晴らしい所をあげてゆきましょう。
・登場人物…龍殺しをやってのけてくれる人のキャラクターがまず素晴らしい。思慮深いというのと何も考えていないというのの違いをいまいち作者は理解してないようです。私がどうみてもこの登場人物は何も考えていません。戦闘モードで真面目な顔をしたところで薄っぺらさが深まるというか薄まるだけです。まさか作者がキャラ作りをサボったんじゃないかと疑いたくなります。いや、こう突っ込んでくれるのを作者が望んでおり、そして問題提起をした(何を?)と解釈すべきなのでしょう。
・トリック…この作者の特徴ともいえるSF的(?)なトリックも冴え渡ってます。この作者は何故か中学理科(正確には高校範囲だが)を使うのを好みます。今回は浸透圧とダニエル電池です。そのネタの出来不出来は別にして思うことがあります。つーか研究者がいるのにそいつらがそのトリックに気付かず外から来たやつだけ気付くってのはどうなの。ホームズの場合は人並みはずれた観察力で周りの人と差をつけています。この作品の場合どうやら主人公だからわかるようです。まあこれはミステリが常に構造的に抱えている問題点ではあるんですが。
・SF設定…SFの素晴らしいところは自分で新たな世界を作ることが出来るところにあります。でも爬虫類が進化してドラゴンとはあまりに直線的です。普通思いついてもやらないでしょう。やってももう少しひねる気がします。しかも出てくる必然性があまりよく分かりません。そこまで魅力的な設定にもみえないし何でこんなの選んだんだろう?この微妙な世界が作品の薄っぺらい感じを更にひきたてていて素晴らしいです。

本日の議題
この作品は(一応)SFミステリというジャンルに属するようです。ということで議題は「SFミステリってどうよ?」ってことで。
皆さんはSFとミステリの相性をどう思いますか。個人的には、ソウヤーの「ゴールデンフリース」という作品がSFミステリとしてあり、決して相性は悪くないかと思うのですが。

ここまでが読書会に私が提示した資料になります。このあとの読書会では、この作品のこの部分は具体的にどうかということをひたすらつついていました。そして大変に盛り上がり、まれに見る楽しさが前面に出た読書会でした。読書会における結論として、やはりミステリとSFの相性は悪くないはずだという風に結論付けられました。ある人は上遠野浩平の「殺竜事件」などが相性のいい例だとも言ってました。
 この読書会ではこの作品を紹介するのと同時にもう一つの隠れた目的がありました。それはこの作品の含まれている「2001」という本を紹介することを通じ、日本のSFに触れてもらおうというものでした。ここまでの読書会の流れで翻訳ものが多かったので、それ以外のものもあることを新入生に宣伝したかったのです。ちなみにこの「2001」には神林長平などの大物も作品を寄せており、大変質の高いものになっています。残念ながらこの「2001」に含まれる色々な短編を読んで貰うという目的は余り達成できなかったようなのですが、この読書会をきっかけに三雲岳斗にはまっていった人が居たりしたので、日本のSFを紹介するという目標を達成することができ、大変意義のあるものだったと思います。
 「ゴールデンフリース」もこのときに一押しだと薦めたのですが、こちらは余り功をなさなかったようです。「アフサンの遠見鏡」もソウヤーの傑作なのですが、何故か余り知れ渡らず中々続編が出るにまで至っていません。こちらに関しては非常に残念に思うので、また何かの機会があれば、ソウヤーをアピってみたいと思っています。

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