DATA

開催日:2002/12/6
レポーター:大澤
課題:瀬名秀明選「贈る言葉 WONDER」

RESUME

・まえおき
このアンソロジーは、光文社から出された「贈る物語」というシリーズの一冊です。このシリーズは後2冊があり、それぞれミステリー編とホラー編として、推理小説作家の綾辻行人氏と宮部みゆき氏が作品を選出しています。
で、この本は、SF編であります。SFでアンソロジーが出るというのも、まぁそんなにあることではないので、ここらでやってみようかなぁーと思いました。

・「はじめに」について
アンソロジーというのは(ご存知かと思いますが)、あるテーマにそって色々な作家の作品が集められた本を指します。テーマは様々ですが、中心人物となる一つの人物が(ある意味)自分の主観で選んでいくものが多いような気がします。海外には結構あります(アイザック・アシモフやジュディス・メリル、日本では筒井康隆氏の作品を見たことはあるが…)。日本には意外と少ないのですが、様々な作家が新規に書き下ろす「競作」などが近いかもしれません。
で、これは瀬名秀明氏自身の選んだ「SF短篇集」という事になります。従ってこの「はじめに」では、彼の選出にあたっての「考慮」が書かれています。

――なぜぼくだけややマニアック寄りにしたかというと、これはSFというジャンルの特殊性に関わっています。いまSF小説の「ど真ん中」といわれる作品ばかりを集めて「贈る物語」として提供するのは、あまり意味がないと思っているのです。(p6、10)

これに続く一連の文章は、彼が「パラサイト・イヴ」を書いてからの、いわゆるSFファンダムとの「論争」の中で彼が抱いてきた物であり、この作品集が彼の、いわゆるSFファンダムへの「答え」になっているのではないかと思うのですがどうでしょう。

・ま、それはともかく
簡単な作品の紹介にまいりましょう

山川方夫「夏の葬列」
瀬名氏は「教科書」で読んだと書いていますが、私も何か教科書で読んだような気がします。戦争中の苦い思い出が、夏の葬列の中で甦って来る話です。

ジャック・フィニィ「愛の手紙」
「ゲイルスバーグの春を愛す」で有名なジャック・フィニイのタイムトラベルファンタジイ。ノスタルジックな空間で過去と現在が交錯します。

式貴士「窓鴉」
蘭光生氏の別名(うそ)作家です。部屋に突然やって来た謎の鴉と受験期青年のお話。

川端康成「雨傘」
言うまでも無く有名な川端康成の「掌の小説」です。傘によって起きる少年と少女の間の微妙な心のやりとりを書いた作品。

井上雅彦「よけいなものが」
ショートショート作家の井上雅彦氏の(たぶん)初の作品。確か星新一編の「ショートショートの広場」の受賞者じゃなかったかなぁ。真夜中に話す二人の男女、そして…。

北野勇作「蟻の行列」
「かめくん」でSF大賞を受賞した北野勇作氏のHP上の小編。蟻が歩いてます。

画家から作家へ――福田隆義・藤沢周平・皆川博子・眉村卓・佐藤愛子・河野典生・赤江瀑
福田隆義という画家が描いた絵を元に、色々な作家が小説をつけるという変わったコンセプトで作られた作品集。一言では説明できませんが、絵は強いですな…。

岡崎二郎雪に願いを」
「アフター0」で良質のSF短篇を描き、「大平面の小さな罪」で突拍子もないアイディアを見せ、「国立博物館」でグールドとドーキンスをわかりやすく伝え、「SUNちゃん」でファンをどことなく不安にさせる、短篇SF漫画の第一人者、岡崎二郎の作品。
雪の形を変える発明をめぐる一騒動あるラブストーリー。本当は三作連続で発表された作品の一つです(冒頭の左上の雪女がそれ)。話としては少し短いような気もするが…どうなんでしょうか、瀬名さん(って長えな、このレビュー)。

大場惑「ニュースおじさん」
90年代の日本のTVに突如として現れたトワイライトゾーン、「世にも奇妙な物語」の中の作品をノベライズ化したもの。ニュースの現場に必ず映るという「ニュースおじさん」をめぐる、若い夫婦のドタバタ劇。

いとうせいこう「江戸宙灼熱繰言(えどのそらほのおのくりごと)」
歌舞伎の語りを元に、江戸期の日本に現れた宇宙人達の活躍を描くトンでも話。

江戸川乱歩「鏡地獄」
日本推理小説界の父とも言える江戸川乱歩のホラー短篇。鏡に魅せられた男の末路を、その友人の立場から描いた作品。

平山夢明「托卵」
現代ホラー作家平山夢明の作品。明治曙の時代に、見せ物小屋で断食を続ける男の思い出が語られる。

光瀬龍「戦士たち」
戦争をテーマにした連作シリーズ「全艦発進せよ!(オール・ファイヤー)」の一編。水中で戦う潜水艦とその結末を描いた作品。

星新一「ひとつの装置」
日本SFの生みの親の一人であり、ショートショートの第一人者、星新一の短篇。「人類にとって必要な装置」という装置の話。

・そして
トリがこの作品になります。

アーサー・C・クラーク「太陽系最後の日」

遠い未来、太陽系が亡びてしまうという危機に、地球の人類を救いに来た宇宙人達を描いた作品。遥か未来の人類には何があったのか? 彼らは何を望んだのだろうか?

――ハードSFとは、科学そのものを書くのではない。
  科学の面白さ、といったものを書くのでもない。
  ハードSFとは、科学に魅せられ、科学に取り組む、他でもない人間の心を描く小説なのではないか。主体は科学ではなく人間側にあったのだ。(p319)

・というわけで
全体を通してみると、いくつか特徴があるような気がします。
まず、いわゆるSFと呼ばれるような作品がそれほど無いこと(あとがきでそのことに触れていますが)。それにも関らず、全ての作品にSF的驚きがあること。そして、これらの作品はどれも、物語としてバランスが取れていて、まとまっていること。オチがきちんとあること。
総じて、瀬名秀明氏は、健全な精神でもって、SFを他人に勧める際に、一番上手な所を持って来たのではないかと思うのですが、どうでしょう。

まとめらしいまとめは無いんですが、まぁ思うところを語ってください。そして、出来れば他の短篇も読んでみてください。

COMMENTS

作品ではなく、アンソロジー自体の批評、ということでずいぶん参加者を混乱させてしまったような気がする。
ここにお詫び致します。
とりあえずいろんな作品について突っ込めたので良かったと思うが、話が分散してしまったような気がする。アンソロジーや短篇集自体の読書会を行う際には、始めにレポータが、テーマなりなんなりを決めておいた方が良いだろう(例:瀬名秀明とSF、アンソロジーとSF、クラークの描く未来など)。

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