開催日:2002/11/15
レポーター:向井
課題:フィリップ・K・ディック「マイノリティ・レポート」(早川文庫)
RESUME
〇あらすじ
予知能力者を用い、犯罪が起こる前に犯人を逮捕できる時代。所長自身の犯罪が予知されてしまい、自分が知りもしない人間を殺す事はありえないと考え、誰かの陰謀かと考え逃亡しながら真実を見つけようとする。奥さんや自分の後任となるであろう男、殺すとされている相手など数々の容疑者が出てきて誰が本当に悪い人間かなかなか掴めない運びが非常に面白いと思う。あまり遠未来な風でもない。ベイブレードがラジコン化されてしまうのだからこんな未来が来る日があるかも?
〇予知能力の設定 三人の予知能力者の発声する音を二箇所のカードに印刷、するという間違いを防げるようになっている・・・と思うが裏を返せばやはり大元の部分ではこのシステムに完全な信頼を置けない、という風にもとれる。また、シャーマンや神託みたいな大昔の政治体制を思い浮かべられる。
〇未来社会における機械(コンピューター)の持つ影響力
本作とあのマトリックスを比べるとどちらも同じ要素が抽出できると思う。すなわち本来人間が使うものである機械が人間を縛ってしまう状況である。
だがマトリックスは機械の生み出したもう一つの世界を描く為、分かりやすくはなるが突っ込み所が増えてしまったように思われる。それに対し、本作は予知能力者の存在を打ち出しただけで機械が完全に社会に溶け込まれているように思う。更に人間がそれを用いるので「紙切れ一枚で人生がかわる」状態が生まれて話が膨らんでいると思う。
〇当たるべくようにして当たる予言
よくある話(?)だが、ノストラダムスの予言を知りそれに合わせて1999年に犯罪を犯そうとする人間が出現した場合、予言が当たったとみなすのかどうか、みたいな議論があった。本作も、カードそのものが無ければ起きなかったのでは・・・と考える事も可能といえば可能だ。予知能力そのものがタイムパラドックスを起こす形になる、その辺りのバランスがまた本作にSFらしさを盛り込められていると思う。
〇映画になったら
スティーブンスピルバーグ監督。トムクルーズ主演。・・・。えーと、あとがきには「話が二転三転し、映画向きである」と書かれてある。確かにそうだ。映画化されるのだ。
だがこの作品にはアクションシーンも少なく(交通事故、最後のシーン)、奥さんも疑われるし(不倫でもさせるのか?)そもそも主人公は中年で知性派であり、元気ハツラツオロナミンC派ではない。むしろ児玉清の救心の方が近いと思う。いかにトムクルーズ主演のつくりで二時間近くの映画になるのだろうか?そこが最も期待し、心配するポイントである。
COMMENTS
・ディックの描くディストピアにしては主人公が権力持ってるし、最後は組織の為に自らを投げ打つし、その点では少しぬくめになっているかも知れない。
・やはり自分もいきなり犯罪をおかすと言われても納得せず逃げたい。
・児玉清とは少し違うかもしれない、という意見も出た。
・映画・・・主人公が一署員で所長とかが悪者か? プレコグと逃亡劇を繰り広げるのか?等の考えが出されたが、やはり謎である。しかし誰も見に行こうという人はいなかった。
読書会から数日後、マイノリティリポートの映画のCMを見た。トムクルーズがかっこ良さそうにしていたが、ロボット(人型ではなく、虫のような)が大量に出現していたり、空飛ぶ乗り物が空中ショーを繰り広げていた。大方の予想通りになりそうである。