開催日:2002/11/8
レポーター:海老原
課題:ロバート・A・ハインライン「鎮魂歌」(河出文庫『20世紀SF(1)』)
RESUME
集え、モンキー野郎共!! 右翼のオジサンの名の下に!!
〜ロバート・A・ハインライン「鎮魂歌」(河出文庫『20世紀SF(1)』収録〜
〇あらすじ
月開発の父親的存在であるD・D・ハリマン老人が、地方を巡業している「月ロケット体験フェア」のパイロット二人(マッキンタイア船長、チャーリー機関士)に接触するところから話は始まる。月開発会社を経営する立場でありながら、健康上の問題を抱えているがために、実は月へロケットでいったことのないハリマンが、死ぬ前になんとしても月へ行きたいので連れて行ってもらえないか、という依頼をしにいったのであった。
ハリマン老人の「宇宙野郎魂」に触れ、違法と知りながらも協力する二人。やがて官憲の手が伸びるが、それを何とか交わして念願の宇宙へ!!
しかし、宇宙旅行によるハリマン老人は度重なる衝撃で帰らぬ人となってしまう。
〇ハインラインについて
Robert A. Heinlein(1907-1988)
1907年にアメリカのミズーリ州で生まる。
ミズーリ大学およびアナポリスのアメリカ海軍兵学校で学び、海軍士官として5年間勤めたが、病気のため1934年退役する。
その後さまざまな職を経て、1939年処女作『生命線』がアウスタウンディング誌の編集長ジョン・W・キャンベル・ジュニアに認められ、SF界にデビューする。生活するためにSFを書き始めた、と後年語っていた。なぜSFなのか、と問われた時に子供のころからずっと身近に存在していたのがSFだったから、と言った趣旨の返答をしていた記憶がある。
以後次々と作品を発表し、『宇宙の戦士』『月は無慈悲な夜の女王』などの長編でヒューゴー賞を4回受賞。
まさにエネルギッシュなアメリカ50年代のSF界を背負って立つ人であったと思う。そして何よりナショナリストであり、時に作品世界が右翼的であったりもする。私の中では第二次世界大戦で戦争を体験した、「頑固オヤジ」というイメージがある。
後期になると、箍か外れたかのごとくに、冗長な作品を連発。『愛に時間を』など分厚すぎてまだ読みきったことがない。まさにアメリカSF界を代表する作家であったが、1988年5月8日、肺気腫によりこの世を去った。
〇いろいろ
さて、ハインラインである。
・「明るい未来ってなんだっけ?」
氏の作品の中での一押しは、間違いなく『夏への扉』であろう。私のSF原体験もこの一冊の本に凝集されるといって過言ではない。その『夏への扉』の世界で近未来として描かれた2000年はもう2年の前のことだが、ハインラインが描きつづけた(敢えて誤解を恐れずにいうのならば)「明るい未来」というビジョンは、果たして今の私達が生活しているこの現実と、比べてみるとどうなのだろうか。
・「宇宙開発」とSF(参考文献『SFマガジン2001年11月号』)
著者解説にもあるように没後NASAから功労賞をもらったハインライン(日本におけるロボット開発と手塚治虫のアトムみたいな関係か)。SFは常に宇宙と関係してきたといっても過言ではないが、その中でSFの果たした役割を考えたい。
・その他、ハインラインについて知っていること、思うこと
アシモフ、クラークと並んでSFの三大巨匠とされるハインライン。しかしこの三人を「重要度順」に並べると「アシモフ・クラーク・ハインライン」という順番になってしまうとか(向井さんのHPにそのような記述があったように記憶している)。人によっては、「ハインラインなんていらねえ、ブラッドベリを入れろ!」などとノタマウ輩まで。
私としては「ハインライン・アシモフ・クラーク」の順番なのだが、どうでしょう。
〇ハインライン既読書
『宇宙怪獣ラモックス』
『ダブル・スター』
『月は無慈悲な夜の女王』
『栄光のスペース・アカデミー』
『獣の数字(1)』
『人形つかい』
『ハインライン傑作集(3) 魔法株式会社』
『宇宙の孤児』
『時の門』
『夏への扉』
『宇宙の戦士』
『月を売った男』
『ガニメデの少年』
『レッド・プラネット』
COMMENTS
レジュメでも触れていたSFマガジン内に、ありました。野田昌弘(大元帥)の「《未来史》にみるアメリカの月世界旅行間」と題されたエッセイが。このエッセイにおいて大元帥は「鎮魂曲」と「月を売った男」という短篇を、「私にとって、ハインラインの宇宙ものは」この2篇で「すべて・・・といっても過言ではない」と表現している。つまるところ、「月へ行きたくて行きたくて堪らなかった男の物語」である、と(「鎮魂曲」つーのは、「鎮魂歌」の前の表題)。「月へ行きたいという思いこそSFの源だと信じ込んでいる」大元帥にとっては、この短篇はSFそのもの、なんだそうで。
虎の衣を借りたわけではないけれども、自分にとってもハインライン=月(『月は無慈悲な夜の女王』は『夏』の次ぐらいに読んだのである)であるし、SF=月、というイメージは強い。もう少し多い人数でやれればよかった。マジで。