開催日:2002/5/21
レポーター:向井
課題:フィリップ・K・ディック「CM地獄」(早川文庫『ディック傑作集(4)』)
RESUME
20世紀が100年前の世界、ガニメデまで通勤している夫、モリスとその妻サリーの家にファスラッドなる商品の訪問販売をするロボットが訪れる。が、このロボットがファスラッドそのものであった…という、どう読んでもSFである小説。
この作品は1954年のもの。この当時のメディアがどこまで進んでいたか(私の力不足で)分からない為、作者がどこまで先見の明を持っていたか分からない。が、少なくとも現在の迷惑メールやワン切りなどは無かったはずの当時から過剰なCMへの懸念があったと思われる。今読んでも、いかに情報技術が発達しそれに合わせCMが発達したかを考えさせられる。
ただ情報伝達の技術が進んだ世界ならそんな苦労して通勤しなくても、と思う。ロボットの感じといい(下部で記述)20世紀的な世界観がある"21世紀"。
・登場人物3人が表す要素
・モリスは通勤中のCMを忌み嫌い20世紀の生活に憧れている。誕生日を忘れる程になっている、もろサラリーマンみたいな人>74年頃の読み手の側の人物。
・サリーはこの世界の生活に順応しきっている。ファスラッドに頭が悪いと揶揄されるし行動や発言からも決して知的に思えないし、最後には夫に置き去りにされるしとろくな印象を持たしてくれない21世紀規格の人間。
・ファスラッドは商品そのものでありCMそのものの象徴。命令にただ従い融通がきかない、というロボットの怖さが残っている辺り、20世紀に考えられた"ロボット"である。リアル観は薄れるが、逆に「決して未来のモノではない」感じが出ているともとれる(私の最初の感想は笑う"セールスマン+C3PO")。
・ファスラッドが修復作業を行う場面=活躍シーンがカットされることで彼(?)の破壊活動のみが表面に打ち出されている(と思う)。
終わりについて
いってしまえば何の救いも無い終わり方である。読者のみならず、書いた本人までが終わり方に対し賛同していない(あとがき参照)。それでもサリーが置いていかれファスラッドと共に脱出するという選択を捨てていないので、どちらにせよサリーはモリスにとって決して合わない存在に位置づけられている。
COMMENTS
始めに文章中の、「時速6千マイル」という表現に突っ込みがはいる。ガニメデまで通勤するのは無理だろうと思われ、1マイルが何キロに相当するかを調べる。具体的な数値を出すまでもなく、相当な無理があることを再度認識。
斉藤氏から椎名誠の「アドバード」という作品が紹介される。
その後、ファスラッドのシュールなデザイン「上半身は、真四角なタンク」「キャタピラーは普通の2個ではなく倍の4個」に対して、とにかく凄いというイメージを出そうとしての事だろうがキャタピラーが倍の数になっても仕方ないという結論に。
また、この作品のタイトルはCM地獄となっているが、CMに関しての話は少なくどちらかというとロボットとか未来の世界の話がメインになっているようである事でほぼ意見が一致。
反省点として、作者のディックの事についてレポーターの知識不足のために解説できなかった点と、司会進行がはかどらず少し手持ち無沙汰な時間が発生してしまった事が挙げられる。また、レジュメ配布時には1974年発表としてしまっていた。
蛇足…読書会後、トントンに行く。